空き家再生ビジネス
(画像=olezzo/stock.adobe.com)

新型コロナウイルス感染症によって、私たちの生活スタイルは大きな変化を余儀なくされています。その代表のひとつであるテレワークは、私たちの「働き方」を大きく変えました。テレワークを恒久化させて出社率を半分以下に減らしたり、単身赴任制度を廃止したりする企業も出ています。

こうした動きは、不動産市場にも影響を与えています。テレワークの普及により、家賃の高い都心に居住する必要性が薄れてきたためです。近年、特に地方部で社会問題と化していた「空き家」に対して注目が集まり始めるなど新しいビジネスも胎動しはじめています。

今回はこの「空き家」を軸に、新型コロナウイルスで変わった不動産市場を概観したいと思います。

コロナ移住、二拠点生活の実態。コロナは“暮らし”をどう変えた?

しばしばメディアなどでも取り上げられる「コロナ移住」。実際に都心部から地方部へ移住した家族などを取材した映像・記事を目にされた方もいると思います。人材派遣大手のパソナグループは9月、本社機能の3分の2を東京から兵庫県の淡路島に移転、およそ1,200人の社員も同島勤務とすることを発表し、大きな反響を呼びました。

また移住に限らず、東京での新型コロナウイルス新規感染者数が落ち着かないなか、働き方の変化に伴い、地方への移住や二拠点生活(都市と地方)を検討する人が増えています。

栃木県が東京都内に設けている「とちぎ暮らし・しごと支援センター」は、休止明けの7月の相談件数が、過去最多の56件にのぼったと下野新聞が報じています。また東京新聞によれば、東京都の西部に位置する檜原村では、役場に空き家物件の問い合わせが相次いでおり、4月までは月に数件だったものが、5月以降は20~30件に急増しているということです。

同様の動きは全国に広がっており、新型コロナウイルスが私たちの“暮らし”を変えつつあることがわかります。

オフィスのあり方も再定義されつつある

テレワークの浸透によって、これまでのように都心部のビルを間借りし、社員には通勤手当を支給するという“オフィスのあり方”を見直す企業が出始めています。オフィス賃料と通勤手当の削減は大幅なコストカットにつながるため、企業にとってもテレワークを積極的に導入する理由があるのです。

実際、オフィスの増床計画の見直しやオフィス自体の解約を決断する企業も出ており、オフィス仲介の三鬼商事の調査データによると2020年9月時点の東京都心(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)の平均オフィス空室率は3月1.56%から7ヵ月連続で上昇し、3.43%となっています。これは2017年3月(3.60%)以来の高さです。

社会問題をチャンスに。「空き家再生ビジネス」とは?

このような市場変化もあり、「空き家再生ビジネス」は注目が集まっています。近年、都心部において中古マンションを「リノベーション」して販売するというビジネスモデルが盛んになっていましたが、その対象が地方の空き家にも向きはじめているのです。

空き家の最大の魅力は何といっても価格でしょう。特に地方部の空き家は、都心と比べて格段に安く手に入ります。最近では空き家マッチングサービスを提供する民間企業も誕生しており、なかには“100均物件”(100円あるいは100万円の物件)のみを扱う「空き家ゲートウェイ」というサービスも存在します。

また群馬を本拠とするカチタスは、空き家を買い取って再生、販売するビジネスモデルで2017年には東証一部に上場。ニトリホールディングスが3割出資する同社は、コロナ禍でも堅調に成長を続けています。

熱い視線を浴びている空き家ですが、依然として、自治体にとっては頭を悩ませ続けている大きな問題ということも忘れてはなりません。国土交通省の資料によれば、ここ20年で日本の空き家は846万戸と約1.5倍に増加。適正に管理されない空き家が周辺の生活環境に深刻な影響をおよぼす事例も発生しています。こうした状況に国も本格的な対応策を講じており、2015年には「空き家対策特別措置法」が全面施行となっています。

「空き家再生ビジネス」の課題とこれから

にわかに注目を集め始めている空き家再生ビジネスですが、まだまだ情報入手が難しいという課題も残されています。

たとえば「こういった空き家を探したい」と思った方が、自分で情報収集することは難しいでしょう。そこで不動産会社などに相談すると思いますが、事業者も数多ある空き家情報を網羅できているというわけではありません。また自治体の職員が登記簿を調べても持ち主がわからない、“所有者不明空き家”も増加を続けており、こちらも深刻な問題となっています。

そんななか国土交通省は、全国の自治体が空き家情報を一元的に管理するのを支援する「空き家バンク」という取り組みを主導しています。民間事業者もこれらの情報を活用できるようになっていますが、まだまだその情報が充実しているとはいえない状況です。

また、2019年に発表された国土交通委員会調査室の資料では、2017年に価値総合研究所が地方自治体に向けて行ったアンケート調査から“空き家バンクは地域の空き家対策としての位置付けを高めつつある”と述べているものの、地域の空き家の登録率が体感で3割以上と回答する自治体がなかったため、空き家バンクの登録状況には課題があることを示唆しています。

官民連携して空き家情報のさらなる充実化に努め、消費者の利益を最大化するような取り組みを続けていくことが重要になってきています。

空き家再生ビジネスを後押しするような国の支援策も設けられています。空き家バンクに登録された住宅の取得に対して、財政的支援・住宅ローンの金利引下げや、子育て世帯・高齢者世帯向けの賃貸住宅に空き家を活用するために、住宅の改修や入居者負担の軽減などです。

これらをうまく活用できれば、移住希望者、空き家所有者、仲介業者、地方自治体、すべての関係者にとってメリットがあり、ビジネスの加速化にもつながるかもしれません。

文・J PRIME編集部

>>会員登録して限定記事を読む

【関連記事】
いま世界的に「ブランドロイヤルティ」が低下しているわけ?
アジア圏で急増するファミリーオフィスとは
京都を手中にできる1室7億円台の超高級マンションは安い?高い?
年の瀬はベートーヴェンの第九を聴いて新年を迎えよう
マルダ京都でラグジュアリーなだけでなく哲学に触れるステイを