IBM,オフィス
(画像=sundry-photography/stock.adobe.com)

新型コロナウイルス感染症の影響で、リモートワークへ移行する会社が増えた結果、オフィス需要は目に見えて減少しました。2020年5月にはTwitterが無期限で在宅勤務を許可し、いまや“オフィス不要論”さえ叫ばれるようになりました。

ところがこのコロナ禍の真っただ中、Facebookをはじめ、IBMまでもがオフィスを借りる/新設する動きを見せています。この記事では、IBMの動きに注目しつつ不動産市場はどうなっていくのかを考えていきます。

攻めの経営を続ける、IBMの動き

Business Insiderは、米IBMが2020年10月6日、ニューヨークの不動産市場で最大50万平方フィート(約4万6500平方メートル)のオフィス物件を探すための提案依頼書を発行したことを報じました。

IBMの本社は、ニューヨークの中心地から数十キロほど離れたニューヨーク州ウェストチェスター郡アーモンクの森に囲まれた場所にありますが、ニューヨークに市内に以前からあった複合ビル「51アスタープレイス」や超高層ビル「590マディソン・アベニュー」など9ヵ所に散らばる拠点を1ヵ所にまとめる方針だということです。

同社バイスプレジデントのジョアンヌ・ライト氏は、コロナ前の状態でも、コロナ後の状態でもどちらでも活用できるオフィスの形態を考えている、とBusiness Insiderに答えています。

またIBMは10月8日に、歴史的に重要なビジネスである大型コンピューターなどのレガシーインフラ事業をスピンアウトすると発表。ここからも、同社がコロナ禍でも攻めの経営を打ち出していることがわかります。世界が苦境に立たされている状況下でも成長を続けるために、やはりIBMはニューヨークなどアメリカの中心都市に大規模なオフィスを構える攻めの姿勢が重要性だと認識しているようです。

コロナで一度冷えた不動産市場

コロナ禍が企業にもたらした変化。その一部に、業績悪化に伴う資金繰り面の問題や、テレワーク導入の促進が挙げられます。こうした経営環境の変化によって、固定費として重くのしかかるオフィス契約を見直したり、オフィスの確保に及び腰となった企業は多いでしょう。

結果的にオフィスビルなどの物件のオーナーの交渉力は下がり、入居者からの価格交渉に応じるケースも見られます。こうした交渉もあってか、Facebook は8月に都市開発のVornadoと契約し、ニューヨークのファーリー・ビルディングというオフィス物件を借りています。

Facebookは社員の在宅勤務を推進していただけに、今回のニューヨークへの大規模なオフィス投資には大きな注目が集まりました。さらに、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事もFacebookにこのように声明を出しています。

"Vornado's and Facebook's investment in New York and commitment to further putting down roots here - even in the midst of a pandemic - is an important signal to the world that our brightest days are still ahead and we are open for business."

VornadoとFacebookのニューヨークへの投資、そしてパンデミックの最中でもニューヨークに根を下ろす決断をしたことは世界に向けた重要なシグナルになります。つまり、まだ先にある私たちの“最も輝かしい日”に向かって、ビジネスを継続するのだと(編集部訳)

長期契約はひとつの交渉材料になっている?

コロナ禍の世界は、IBMやGAFAなどの大手IT企業にとっては、ある意味では好機ともいえる環境。AIやクラウドといった技術は、コロナ禍のような事態では需要を加速させています。

IT企業にとってニューヨークは、多くの顧客と優秀な人材が集中している“要衝”です。今はコロナ禍で景気が停滞しているかもしれませんが、企業にとってはこれ以上にビジネスの将来を描きやすい場所はないに違いありません。

ニューヨークに拠点を置きたいのなら、安く賃貸契約ができるのは今のうちだということでしょう。先のFacebookは15年間のリース契約を結んでいることがわかっていますが、これは賃料の安いうちに長期契約を締結しておく戦略なのでしょう。あるいは、多くの企業が先行きの見えないなかで長期契約を敬遠するため、長期のテナント契約はひとつの価格交渉の材料にもなるかもしれない、という見方もできます。

明るい未来を信じて、投資を続ける巨人たち

多くの企業がコロナ禍による業績不振にあえぎ、不動産市場が停滞するなか、大手IT企業がニューヨークに熱い視線を向けているという流れが見えてきました。日本においても、コロナ禍によってオフィス空室率が上昇するなどオフィスリース市場は厳しい局面にありますが、一方でこうした“大口顧客”が要衝に進出しようと考えているというトレンドは、明るいニュースともいえるのではないでしょうか。

私たちにとっての“最も輝かしい日”はまだ先にある――。そうニューヨークのクオモ州知事が語っていた言葉どおり、私たちは明るい未来を信じ、ビジネスを続けていかなければなりません。IBMも、未来が読めない困難な時代であっても攻めの姿勢を崩していません。積極的にオフィス投資をしていく“気概”が、次世代のビジネスにおけるイニシアチブを獲得していくことにつながるのかもしれません。

文・J PRIME編集部

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