(写真=J PRIME編集部)

「気仙沼ニッティング」というファッションブランドをご存知でしょうか。宮城県気仙沼市で作られる手編みのニット製品が、男女問わず人気を博しています。手編みならではの温かみを携えた気仙沼ニッティングの成り立ちや、そのこだわりをのぞいてみましょう。

こうして生まれた気仙沼ニッティング

フルオーダーのカーディガン「MM01」は300人待ち(2019年1月現在)で、注文から手元に届くまでには約2年半かかるといいます。それだけ待ってでも手に入れたいと思わせてくれるのが、気仙沼ニッティングです。

多くの人を魅了するこのニットが生まれたきっかけは、東日本大震災でした。震災によって甚大な被害を受けた気仙沼市では、震災直後、多くの人が仕事を失ってしまいます。さまざまなものが津波で流されてしまった後“なにもない”中でも始められるビジネスとして、プロジェクトの発案者であるほぼ日の糸井重里氏は、編み物に着目したそうです。

なぜ編み物だったのでしょうか。気仙沼で漁師の妻として暮らす女性の中には、編み物を得意としている人が多くいます。北欧などで漁師が防寒用に着ていたフィッシャーマンズセーターは、夫の安全を祈る妻たちが手で編んでいました。そして、遠洋漁業が盛んな気仙沼市でも同様の背景があったのです。

毛糸と編み棒、それに編み物ができる人がいれば始められるとして考えられた事業でしたが、課題も山積していました。完全な手編みにこだわる以上、編み手に支払う賃金も相応の額が必要です。そのためにはハイブランドとして成立するように、商品のクオリティを追求しなければなりません。個々に編み物を楽しんでいた女性たちを職人へと押し上げ、デザインと寸分たがわぬ仕上がりになるセーターやカーディガンを丹精込めて作り上げてもらう必要があったのです。

これらの課題をクリアして、オリジナル毛糸で紡がれる完全国内生産による気仙沼ニッティングの商品は、フルオーダーのMM01が1着約15万円、フィッシャーマンズセーターのエチュードが7万5,000円ほど。

気仙沼ニッティングの魅力

2012年に始動したこのプロジェクトは、同年12月にファーストモデルMM01を発表。翌2013年2月に初めて販売し、同年6月に株式会社気仙沼ニッティングが設立されました。同社の代表となったのは、アメリカに本社を置くコンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーでコンサルタントとして活躍したのち、2010年に25歳という若さでブータン国政府の首相フェローを務めた、御手洗瑞子(みたらい・たまこ)氏です。

編み手が楽しみながら作り、手に取った客が喜び、さらにそれが編み手の誇りになるように、という理念のもと、編み手と顧客がつながる工夫を販売の仕組みに取り入れつつ、商品のクオリティを追求していくという徹底したブランディングで事業を進めていきました。

編み手が分かる独自のタグ

気仙沼ニッティングでニットを購入すると、さまざまな「喜び」が手に入ります。編み手が誰なのか分かる独自のタグもその一つです。購入したニットには、編み手の似顔絵と名前が描かれたタグが付いています。さらに公式サイトを見ると、編み手の人柄や編み物を始めた背景まで知ることができます。生産者と消費者ではなく、人と人との付き合いを大切にしたい、という気仙沼ニッティングの思いを受け取ることができるのです。

着てみて分かる、やわらかさ

展示販売会で試着して、商品を気に入る人も多くいるそうです。肌になじむオリジナルの毛糸、手編みならではのふんわりした着心地、そして長く着用できるデザインが、多くの人から支持を得ている要因なのでしょう。

ストーリーを買うという特別感

そして何よりも、商品に込められたストーリーの魅力に引きつけられます。気仙沼ニッティングが生まれるまでの背景や、編み手を見つけ増員して、会社を軌道に乗せるまでの道程は、単なる復興支援だけでは終わらず、ブランドそのものが愛されていくまでが物語として成立する美しさと感動を秘めています。商品を一つ購入しただけで、時に編み手と交流しながら商品が到着するのを待つワクワク感と、そのストーリーの一員になれたような特別感を得られるでしょう。

手編みのニットを大切に着こなすというラグジュアリー

2018年11月17日、気仙沼ニッティングが満を持して東京に直営店をオープンしました。特別なニットにはこまめな手入れが必要です。しかし、気に入って着続けていると、ほつれが出てしまうこともあるでしょう。

東京の直営店では、商品の注文だけでなく、お手入れなどの相談もできるそうです。心地よいニットの手触りとそのストーリーを大切にする気仙沼ニッティングを手に取り、やさしい気持ちに包まれてみてはいかがでしょうか。

「気仙沼ニッティング東京」基本情報
住所:渋谷区千駄ヶ谷3-41-8
営業日:金曜、土曜、日曜
営業時間:12時~19時

文・J PRIME編集部

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