グラスに注がれたお茶

江戸の中心地として栄えた、東京日本橋。老舗店が軒を連ねる粋な下町、人形町に今年の7月、日本茶専門店「おちゃらか」が移転オープンした。オーナーは、フランス・リヨン生まれのステファン・ダントンさん。日本茶の魅力を多くの人に伝えるために「日本茶のフレーバーティー」を独自に開発し、2005年に吉祥寺に店をオープン。日本人も知らなかった新たな日本茶の魅力を引き出した多種多様なフレーバーティーの美味しさ、おすすめの飲み方について話を伺った。

50種以上あるフレーバーティーから好みの香りを選ぶ楽しみ

幼い頃に日本文化へ憧れを持ったことをきっかけに、1986年に日本へ短期留学。その6年後に再び来日し、さまざまなお茶を取り扱う著名な紅茶店で働き、日本茶の魅力に開眼したというステファン・ダントンさん。勉強を続けるなか「世界中の人に日本茶を気軽に楽しんでほしい」という情熱に突き動かされ、フルーツ、根菜、花びら、ハーブ、スパイスなどを材料に加えたオリジナルの“フレーバー日本茶”を開発した。「青りんご」「ヨモギ」「焼きいも」「マロングラッセ」……。季節を重ねるごとにラインナップがどんどん増えていき、現在、フレーバーティーの数は50種類以上。ステファンさん自ら店に立ち、客と会話を楽しみながら好みのお茶を提案するスタイルの“街場の日本茶専門店”である。ときには、接客中のなにげない会話から着想を得て、新しいフレーバーが生まれるこ ともあるそう。

お茶を眺める男性
「おちゃらか」のオーナー、ステファン・ダントンさん。リセ・テクニック・ホテリア・グルノーブルでホテル経営を専攻し、ソムリエの資格を取得。「お茶とワインは製造方法や楽しみ方がどこか似ていているところがありますね」と微笑む。壁にはお茶を収納するために集めた茶箱がずらりと並ぶ。


これまでの人生で体得したワインや植物の香りの知識がインスピレーションソースに

「日本には日本茶という大きな宝があるのに、その消費量はあまり伸びていませんし、食事中に飲むお茶として烏龍茶を選ぶ人も多いですよね。もっと気軽に日本茶を楽しんでもらいたくて、色・味・香りの奥深さを感じてもらえるフレーバーティーをたくさん作りました。私はソムリエの資格を持っていて、ワインのアロマにとても興味を持っています。それに、実家が花屋ということもあって、幼い頃から花やハーブに触れてきたので、植物の種類や香りについても知識があるんです。これまでに培ってきた感性を生かし、お客さんに喜んでもらえる茶葉を開発する作業はとても楽しいこと。作りたいフレーバーに合わせて使用する茶葉をセレクトすることもありますが、反対にお茶にぴったりな香りをイメージしてブレンドすることもあります」

パッキングされたお茶
カウンターの手前の茶箱に美しく陳列された、多様なフレーバーティーの数々。柑橘系やベリー系のフルーツは特に女性人気が高い。カフェインが入っていないほうじ茶は、妊婦の支持を集めている。


無農薬栽培で育てられた茶葉で作った海外でも人気のフレーバーティー

また、ステファンさんは海外にも商品を輸出していて、輸出基準を満たす無農薬の茶葉を生産する農家と取引しているという。

「岡山、佐賀、滋賀をはじめ、全国各地の農家で作られた茶葉を使用しています。『おちゃらか』のフレーバーティーのベースとなる茶葉を大きく分けると、緑茶とほうじ茶がメイン。そのほかは、和紅茶、ブレンド茶です。とりわけ使用頻度が高いのが、浅蒸し緑茶。蒸し時間が短い浅蒸しの緑茶は、さっぱりとした茶葉の味が際立っているのが特徴で、フレーバーを引き立たせるのに向いています。とてもまろやかな味わいなので、ミネラルウォーターのように軽く飲めますし、食事にも合わせやすいんです」

数々のフレーバーティー
茶葉に香料をつけることで、アロマテラピーのような癒し効果が期待できる。右上は、緑茶の爽やかさと甘い香りに包まれる「イチゴ」。右下は緑茶、紅茶、よもぎ、ツツジ科エリカ属に属する植物であるヒース、ラベンダーをブレンドした「よもぎ茶」。ふんわりとした爽やかな和の香りに心癒される。左上は緑茶をベースに乾燥させたコーンフラワーの美しい花びらをブレンドした「巨峰」。フルーティーな香りが充満する。左下はほうじ茶とリンデンで調合した、キャラメルのような甘い香りの「マロングラッセ」。


水出し、お湯出し、ミルク出しなど、気分や体調に合わせて淹れ方を工夫する

フレーバーティーを美味しく飲むための淹れ方は茶葉によって何通りかある。

「そのときの気分に合わせて飲み方を工夫すると、楽しみ方にも広がりが生まれ、より味わい深いものになります」とステファンさん。寒い季節におすすめしてくれたのが、ほうじ茶ベースの「焼きりんご」をミルクで煮出した飲み方だ。ほうじ茶とミルクの相性は抜群で、ミルクの濃厚さとほうじ茶のさっぱりとした風味がいい具合に調和する。さらに、黒胡椒を加えると、スパイシーで複雑な味わいに。りんごと黒胡椒の香りが融合するのも、フレーバーティーならではの面白さだ。

ミルク出ししたお茶
ほうじ茶にドライアップル、ドライジンジャーをブレンドした茶葉「焼きりんご」をミルク出しに。


水出しのお茶はワイングラスに注いで飲むことでさらにその魅力を引き出すことでできる、とステファンさんは語る。

「日本茶の透き通った色味を初めて目にしたとき見惚れました。ワイングラスに注ぐことで、湯飲みでは確認できない中身がしっかり見えますし、白ワインのようなゴールドの輝きを愛でることもできる。香りも立ちやすく、心地よく鼻をくすぐってくれますよ」

グラスに注がれたお茶
口に運ぶたびに爽やかな香りに癒される「青りんご」のフレーバーティー。水出しにすると、ホットで飲むよりもカフェインが抑えられ、苦味や渋味も和らぐ。



グラスを回す男性
「炭酸やお酒で割って飲んでも美味しいですよ」。ステムを持ってクルクルと回すと、 お茶に含まれる香り成分がより鮮やかに感じられる。


リラックス効果の高いフレーバーティーとしておすすなのが、「よもぎ茶」。お湯出しでも水出しでも美味しく飲めるが、いまの季節ならホットでいただくと、心にも体にもやさしい一杯になる。

よもぎのお茶
体を温める作用もあると言われるよもぎは、古くから医療目的でも使われてきた薬草。 心を落ち着かせてくれる香りとほんのりと感じる苦味がクセになる。


シチュエーションや気分に合わせてフレーバーや飲み方を臨機応変にチョイスする楽しさがある「おちゃらか」オリジナルのフレーバーティー。例えば目覚めの一杯なら、爽やかな香りの「青りんご」を。

食事中は、レモングラスがブレンドされたさっぱりとした飲み口の「レモン」もいい。「いちご」や「桃」など甘い香りに癒されるフレーバーは、その独特な香りが食欲を抑え、ダイエット効果も期待できそうだ。ここでは語りつくせないステファンさんの知識やたくさんのフレーバーがまだまだあるので、実際に店を訪れ気になったフレーバーティーをぜひ体験してみてほしい。

「おちゃらか」

東京都中央区日本橋人形町2丁目7−16 関根ビル 1F
☏ 03-6262-1505
営業時間 11:00〜19:00
休 無休
https://www.ocharaka.co.jp/


撮影/上原未嗣 構成・文/矢島聖佳

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