コンタクトレス,経済圏
(画像=vaksmanv/stock.adobe.com)

世界が直面している新型コロナウイルスは、私たち人類に、感染防止策を前提とした「人命最優先の経済成長」という課題を投げかけています。

そして、感染防止策のひとつとして日本政府が協力を呼びかけているのが、密接場面・密集場所・密閉空間、いわゆる「3密」の回避です。いま、3密を避けながらのコミュニケーション、決済、運搬などを支えるテクノロジーが次々と出現し、急速に普及しつつあります。

本記事では、こうした最新テクノロジーが生み出す「コンタクトレス・エコノミー(非接触経済)」の現状の一端を紹介し、私たちの生活がどのように変化していくのかについて探ります。

一大商機と期待されるコンタクトレス・エコノミー

「コンタクトレス・エコノミー」の明確な定義はありませんが、一般に“直接触れることなく”モノやサービスを提供したり、取引する経済活動全般を指します。

非接触によって感染防止に寄与することはもちろん、労働時間の短縮、人材不足の解決にも貢献し得ると期待されています。今回のパンデミックを機に、コンタクトレス・エコノミーは世界中で加速度的に広がっていくでしょう。

現在も、この大きな商機を巡って多くの企業が参入を発表しており、コンタクトレス・エコノミーをとりまく話題は尽きません。2020年は、従来型の決済や物流、コミュニケーションが非接触へと置き換わっていく、まさに“過渡期”ともいえる年です。

コンタクトレス・エコノミーの注目企業は?

コンタクトレス・エコノミーで世界をリードするのはアメリカです。先進企業の注目トピックを2つ紹介します。

Starship Technologies:デリバリーロボット

アメリカのなかでも、カリフォルニア州シリコンバレーでは最先端の“非接触技術”が次々に開発されています。そんなシリコンバレーの都市マウンテンビューでは、荷物を配達する小型ロボットが歩道を走行する姿が見られます。

これはサンフランシスコに本社を持つStarship Technologies社が開発したロボットで、セットした住所まで自律走行してトランク内の荷物を届けるというものです。人間が歩行するほどのスピードで歩道を走行。さらに、信号のある横断歩道をわたることができ、6輪のタイヤのおかげで多少の段差を乗り越えられます。もちろん自分で障害物をよけながら走行します。

Starship Technologies 社は、2014年に設立したスタートアップ企業ですが、2019年8月には配達実績が10万回を超えています。コロナ禍でますます資金調達額と業績を伸ばすであろうことが予想されます。

ウォルマート:コンタクトレス化でアマゾンを追随

アメリカの大手スーパーマーケットチェーンであるウォルマートは、次から次へと「コンタクトレス化」のデジタル戦略を進めています。調査会社の米・eMarketerが2020年3月に発表したレポートによると、ウォルマートは米国のEC売上のシェアで、アマゾンに次ぐ2位の座へと浮上しています。

全米に実店舗を多く展開してきたウォルマートは、ネット通販のアマゾンを強く意識した戦略を取ってきました。そのウォルマートが注力する施策のひとつが「非接触化」です。

顧客はインターネットで注文をした後に、車で実店舗の指定された駐車場で商品を受け取るという小売スタイルを推し進めようとしているのです。カートを押しながら店舗内を歩くことも、レジの列に並ぶことも必須としません。

これは「カーブサイド・ピックアップ」と呼ばれるスタイルで、コロナ禍を機に広がっている商品の受け渡し方法のひとつです。ウォルマートはアメリカ国内だけで4,700以上もの店舗を展開します。非接触でありながら、実店舗の強みを生かす試みだといえるでしょう。

私たちの生活に密接するコンタクトレス・エコノミー

私たちの生活の中でも、3密を避ける新しい行動様式が定着してきました。大人数での会議をしない、飲み会を避ける、在宅勤務などが代表です。同時に、コロナ以前から存在していたものの「キャッシュレス決済」が急速に台頭してきました。キャッシュレス決済は、現金との“接触”を避ける意味でコンタクトレス・エコノミーのひとつの形だといえます。

この潮流を後押ししているのが政府で、総務省では「マイナポイント事業」を実施しています。さらに、キャッシュレス推進室を置く経済産業省ではマイナポイント事業実施にともない、「キャッシュレス決済端末導入支援事業」を行っています。同省では2025年6月までにキャッシュレス経済の比率を約4割へと高めることを目指しています。

とはいえ急速な台頭の背景にあるのは、やはりコロナ禍をきっかけに、不特定多数の人々が触れる「現金」を触りたくないと考える人々が増えたことが考えられます(2020年4月カンム社「お金に関する衛生観念と行動の変化 意識調査」)。

加えて、お得なポイントが付与されるサービスが多い点も、キャッシュレス経済の普及を加速させている要因でしょう。コンビニなどでも、従業員と購入者がともに慣れてきたことで、以前よりスムーズにキャッシュレスで会計が済ませられるようになったと感じます。

コンタクトレス・エコノミーは家族と過ごす時間を増やす

これまで当たり前だった生活様式は不可逆的に変化し、「ニューノーマル(新常態)」という言葉を耳にする機会も多くなりました。その象徴的な変化のひとつが、コンタクトレス・エコノミーだといえそうです。

ストレスフルな通勤をする必要はなくなり、オフィスと同じ様に自宅で仕事をする。子どもは学校の授業を自宅で受ける。家族に必要な飲食料品は、オンラインショッピングで間に合わせる。現在はまだ過渡期にありますが、いずれこうしたコンタクトレスな日常を「ノーマル」と呼ぶ日が来るかもしれません。

人と人とのつながりの希薄化も懸念される一方で、家族と一緒に過ごす時間が増える点はコンタクトレス・エコノミーの大きな魅力のひとつです。私たちにとって本当に必要な接触、不要な接触は何なのか。コンタクトレス・エコノミーは、私たちにこの問いを投げかけているように感じます。

文・J PRIME編集部

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