富裕層,財団法人
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「自分の財産を社会貢献のために使いたい」と願う富裕層は多くいます。NPO法人への寄附を考えたりしますが、NPO法人の場合はその活動が、特定の非営利分野に限られており、自身の理念と合致しない場合もあります。そこで財団法人を設立する手があります。財団法人であれば、設立者として自身の想いを後世に伝えつつ、社会貢献ができます。今回はこの財団法人の設立について、新設された3種類の財団法人それぞれの特徴と設立方法・費用、税金上のメリットなどについて解説します。

目次
財団法人とはなにか?
3種類の一般財団法人の設立要件
一般財団法人を設立・運営するには
一般財団法人を設立するメリット
想いと財産を遺すには財団法人が効果的

財団法人とはなにか?

人間(自然人)は契約や売買など、さまざまな権利・義務を主体的に行うことができます。しかし、人間には寿命があり、そうした行為を永続的に行うことは困難です。そこで人間以外でも権利・義務を主体的に行える存在として、法律で規定された人間である『法人』が成立しました。

法人には以下のようにいくつかの種類があります。

  • NPO法人
  • 株式会社
  • 合同会社などの会社法人
  • 特定の目的をもった人間が集まった非営利団体である社団法人
  • 財団法人

他の法人は社員など人間が集まって法人を構成しているのに比べ、財団法人については拠出された『財産』が法人を構成します。したがって、財団法人には株主やオーナーといった法人の持ち主が存在しないといった特徴があります。

また、基本的に事業内容にも制限が加えられており、活動の主な原資は拠出した財産から得られる利子や配当といったものになります。

3種類の一般財団法人の設立要件

以前は財団法人の設立には「公益認定」が必要でしたが、2008年12月に改正された「新公益法人制度」により大きく仕組みが変わり、一定額以上の財産があれば誰でも設立できるようになりました。

新公益法人制度で設立が可能となった財団法人は、正確には「一般財団法人」と呼ばれています。事業や活動内容によって公益財団法人、非営利型の一般財団法人、非営利型以外の一般財団法人の3種類に認定されることとなります。

公益財団法人とは

公益財団法人は内閣府が所管する公益法人認定法に定められている、学術・科学振興や児童・青少年の健全育成などを目的とした23の事業を活動分野としています。そして、不特定多数の人に利益の増進に寄与すると認定された財団法人です。

税金上のメリットとして、公益財団法人は法人税の優遇を受けることができるほか、公益財団法人への寄付金は一定の要件を満たすことで税額控除されるというメリットがあります。

非営利型の一般財団法人とは

税法で定められている、物品販売業や不動産販売業など34種類の収益事業以外、公益性の高い事業を行う財団法人を指します。認定に当たっては非営利制を徹底する必要があり、法人の活動ルールである定款に、剰余金を分配しないことなどを定める必要があります。

税金に関しては、公益財団法人と同様に法人税が軽減される優遇措置が利用できます。

非営利型以外の一般財団法人とは

公益財団法人や非営利型の一般財団法人のどちらにも該当しない場合は、非営利型以外の一般財団法人となります。事業内容や活動分野に特に定めはなく、収益事業のみを行うことも可能ですが、剰余金などの利益を分配することはできません。

また、税金は株式会社などの会社法人と同様に扱われ、財団法人として利用できる優遇制度はありません。

一般財団法人を設立・運営するには

一般財団法人を設立するには、基本的な要件として300万円以上の財産があることと、7人以上の設立メンバーが得られることが必要となります。そして、この他にもさまざまな手続きが必要となります。

手続きには自分自身で行えるものもありますが、専門知識も必要となるため、設立を代行する業者を利用するのも有効です。一般財団法人の設立に備え、必要な手続きと基本的な運用方法について把握しておきましょう。

一般財団法人の設立方法

一般財団法人を設立するには、まず定款を作成し公証人役場での認証を受けることとなります。

その後300万円以上の財産を拠出し、一般財団法人を構成・運用する各役職者を選任し、法務局への登記を行うことで設立することができます。ここで最も重要なのが一般財団法人の活動を決定する定款になります。

この定款の内容により一般財団法人の方向性が左右されるため、将来的に公益財団法人や非営利型の一般財団法人の認定を得たいと考えている場合は、この段階で剰余金の分配禁止などを盛り込んでおくことが重要です。

一般財団法人の設立費用

一般財団法人設立のための主な法定費用は、公証人役場での支払う定款認定料5万円と、法務局で登記の際に支払う登録免許税6万円が主な法定費用となります。これに加え、代行業者などを利用した場合は相応の手数料が必要となります。

例えば定款の作成を行政書士や司法書士に依頼した場合は15万円~20万円ほどの追加費用が必要となります。重要な定款を専門家に作成してもらうため、後々の活動がスムーズに運ぶことが期待できます。さらに司法書士への依頼であれば、一般財団法人の登記まで依頼することも可能です。

注意点として、一般財団法人は拠出した財産が300万円以下となった場合に解散してしまいますので、できるだけ余裕をもった金額で財産を拠出するとよいでしょう。

一般財団法人の機関構成について

一般財団法人を構成し、運営していくためには、最低でも7名による一定の運営機関が必要です。

一般財団法人の機関構成は最低3人の評議員からなる「評議会」が最高意思決定を行う機関として存在し、理事と監事の選任・解任を行います。

理事は評議会からの選任を受け、法人の運営方針を定め、業務執行を行う役割を担います。理事は3人必要で、全員で理事会を構成し、理事長は株式会社の代表取締役のように法人を代表することもできます。

監事は最低でも1人が必要で、理事の業務執行を監査し、法律で定められている調査報告書を作成します。また必要があるときは理事会に出席し意見を述べる義務があります。

一般財団法人を設立するメリット

一般財団法人を設立する場合、得られる法人格についてのメリットと、一般財団法人独自のメリットに分けることができます。

法人格のメリットとして、個人で社会貢献を行う場合よりも税金面で優遇を受けることができるほか、活動に必要な許可・資格を法人として取得することで、一般財団法人の構成メンバーが変わった場合でも取得済みの許可・資格を維持できるといったメリットがあります。

一方で、一般財団法人独自のメリットは、財産が主体となることにより、人や環境に左右されず、設立時の理念の永続化が期待できる点にあります。

例えば、同じ非営利法人で人が主体となっている一般社団法人がありますが、こちらは経営状況の悪化などにより社員が居なくなってしまえば解散してしまうことになります。

また、株式会社などの営利法人では社員・株主のために利益を上げ続けて行く必要があります。時代の変化にしたがって臨機応変な活動を行うことが求められることがあり、設立当初の理念を続けて行くことが難しくなってしまう恐れがあります。

想いと財産を遺すには財団法人が効果的

新公益法人法の改正により、以前よりも条件が緩和された一般財団法人が設立可能となりました。

富裕層の方が築き上げた財産により社会貢献を行っていく場合、すでに設立している団体などへの寄付も有効です。ただ自身の社会貢献の理念に沿う団体が見つからない場合は、一般財団法人を設立してしまうのも重要な選択肢と言えるでしょう。

一般団法人の設立するメリットとして、自身の社会貢献の理念をダイレクトに反映でき、長く社会貢献を行うことができる点にあります。

一方、設立時の注意点として。将来的に公益財団法人や非営利型の一般財団法人の認可を受ける場合、設立時に活動方針を定め、司法書士などの専門家を交えた上で、活動方針や定款を慎重に定めるとよいでしょう。

執筆:菊原浩司
保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士、一種証券外務員資格、管理業務主任者。Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視し、主にマイホーム・投資用などの不動産取得や資産運用や生命・損害保険のコンサルタントなどを行っています。

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