シャンパンボトルとフレンチ

フランス・シャンパーニュ地方の中心地、ランスにあるミシュラン二つ星を獲得した「レ・クレイエール」の総料理長フィリップ・ミル。38歳の若さでフランスの料理人にとって最高の名誉でもある国家最優秀職人賞を受賞するなど、国内外で注目を集めるフィリップ氏が、自身の名前を冠したレストランを2017年に初めて東京にオープンさせた。料理長を務めるのは、日本のホテルやフランスの二つ星料理店などで研鑽を積み、フランス料理の道を歩み続け23年余りという、経験豊かな中村哲也氏。フィリップ氏と深いパートナーシップを結び、シャンパーニュとフランス料理の至福のマリアージュを追求した、料理にかける想いをお届けします。

ガーデンテラスで涼やかな風を感じながら、シャンパーニュ片手に優雅な食事を

「東京ミッドタウン」のガーデンテラス棟の最上階に位置し、空を近くに感じられる眺望が素晴らしい「フィリップ・ミル東京」。レストランのダイニングでコース料理を堪能する前に、まずは穏やかな日差しが心地よいテラスで、アペリティフを楽しむのも優雅なオフの過ごし方としておすすめだ。

パラソルが並ぶテラス
ガーデンテラスはミッドタウン周辺の緑豊かな景色を眺められる、まさに“都会のオアシス”といった趣。特筆すべきシーズンは春と秋。春にはガーデンテラス下の桜並木が眺められ、秋には紅葉に変わりゆく色彩のグラデーションを感じることができる。


料理とシャンパーニュが引き立て合う、美的センスに溢れるひと皿

ランチとディナーを開放的な空間で楽しめる「フィリップ・ミル東京」は、シャンパーニュと美食のマリアージュを思う存分堪能することができるレストランだ。シャンパーニュの銘柄は160種類以上をラインナップ。大手メゾンのものから、小規模な造り手のもの、農家が共同組合で造ったものまで、シャンパーニュの多様性や個性に触れることができる。グラスシャンパーニュのペアリングセットは5,808円(税・サービス料込)から。食前酒向きのシャンパ―ニュにとどまらず、食中にもおすすめのグラスが用意されていて、「シャンパーニュの奥深さに出会いたい」というビギナーにもやさしいコース内容だ。

白を基調としたダイニング
明るい光が差し込むダイニングは、ゆったりと空間をあけて着席できる80席。このほかに個室が4部屋。壁一面を窓にした開放感のあるしつらえで、艶やかなシャンパーニュとリンクするような調光、アクリルフレームのアートなどがエレガントなムードを演出している。


料理やデザートは、常に「シャンパーニュが寄り添う味わい」を意識。フランス料理のセオリーを軸に、旬の食材の取り合わせやソース使い、盛り付けにこだわった優美なひと皿は、フィリップ氏と料理長の中村氏が毎日のようにコミュニケーションを重ね、“共同作品”のごとく創作しているという。
「ひと皿の料理が完成するまでは、フィリップシェフへの相談を含め、試行錯誤する時間がとても長いと思います。メニューを考案するときは、季節の食材にどんなものがあるのか、隈なくリストアップ。それから、食材の取り合わせを何度も吟味します。例えば、フルーツ単体で美味しいものでも、合わせ方次第ではその輪郭がぼやけてしまうこともあります。食感の相性も含めて、毎回これでいいのかどうか、決定するときはとても神経を使いますね。ある程度、自分の中で納得ができたタイミングでフィリップシェフに料理の写真を送り、毎日電話で話をします。シェフが考えている料理とすり合わせるために、何度もやり直すことも。パッと目で見ただけで、シェフにすぐに納得してもらえるようなひと皿を作るのが信条です」と中村シェフ。

腕を組むフレンチのシェフ
フランスには南仏とアルザスに3年半滞在。二つ星レストラン店で主にクラシックなアルザス料理をベースに、ガストロノミーな料理に励んでいた中村シェフ。2019年より「フィリップ・ミル東京」の料理長に就任。試作はレストランのスタッフにも試食してもらい、そこで出たアイデアを採用することも多いそう。「共に働くスタッフが納得する料理を作りたい」と、情熱的に語る。


柑橘やハーブを使ったソース使いが、味の輪郭を際立たせるアクセントに

「フランス料理はソースで食べる」と言われるほど、ソースの存在が味わいの決め手になることが多い。この日のスペシャリテも、中村シェフの技術が光る、柑橘やハーブを繊細に扱った香り豊かなソースがアクセントになった前菜が差し出された。ステンドグラスに見立てたソースは工芸品のように美しく、じっくりと目に焼き付けたくなる。

甘海老のタルタルを丸くソースが囲む
フランスの「レ・クレイエール」でも出しているフィリップ氏お気に入りのスペシャリテ、「甘海老のタルタル ステンドグラスに見立てた甲殻類とレモンのヴィネグレット ヴェルヴェーヌの香り」。ヴェルヴェーヌはフランス語で、ハーブのレモンバーベナのこと。ステンドグラスをモチーフにした盛り付けは、フィリップ氏のスタイルを忠実に再現。


「フィリップシェフは、あらかじめ食材とソースが絡み合った状態で提供する料理を好まず、『ソース・ア・パール』と言って、ソースを別にして提供することを確固たるスタイルとしています。この日のスペシャリテの甘海老のソースは、3種構成に。オマール海老のだしを煮詰めた旨みを感じるソース、シャンパーニュ地方に伝わるシャンパンビネガーを使ったヴィネグレットソース、レモンの果汁とレモンのような爽やかなヴェルヴェーヌの香りを抽出したソースです。シェフはこのソースのことを『グルマンディーズ』と表現しました。直訳すると『ご馳走』『食いしん坊』という意味です。ビネガーやレモンの酸味、ヴェルヴェーヌの香り、ビスクのうま味など、味わいや風味が異なるソースをひとつひとつタルタルに絡めることで、味に広がりが生まれ、アクセントに。甘海老のピュアで濃厚な甘さやキャビアの塩味がよりリッチに感じられると思います」

ソースで使ったレモンのような爽やかな香りが特徴的なヴェルヴェーヌは、テラスのハーブガーデンで採取したもの。

ハーブガーデン
風が吹き抜けるテラスでは、ローズマリーやゼラニウム、バジルなどがこんもりと育つ。中村シェフをはじめ、スタッフが収穫を楽しみにしているという。フレッシュハーブを用いてハーブティーを提供することも。


「フランスの『レ・クレイエール』にもハーブガーデンがあります。少しの量でも、自分たちで作物を育てることで、調理をするときに慈しむ気持ちが育まれますし、フレッシュなハーブの美味しさを日々、感じられるのが嬉しいです」と中村シェフ。

中村シェフと並走するパートナーが、シェフソムリエの椨(たぶ)賢太郎さん。国際ソムリエ協会認定ソムリエの確かな目で選び抜かれたシャンパーニュは、実に“特別な日の乾杯”に相応しいものばかり。心を高揚させる一杯を差し出してくれる。

正装に身を包む男性
名古屋の老舗ホテルや都内2つ星レストランなどグランメゾンのソムリエを歴任してきた椨さん。シャンパーニュの造り手とも直にコミュニケーションを取り、生産背景や作り手の想いを感じたうえでセレクトしている。


「シャンパーニュは料理とのマリアージュで、またひとつ違う輝きを見せるものだと思います。そして、大手メゾンはもちろんリスペクトすべき存在で素晴らしいキュヴェを生み出し続けていますが、小規模生産者による個性的なものも実にたくさんあるんです。当店ではノンヴィンテージから、メゾンが最高級品として特別に造った貴重なプレステージまで、現在取りそろえている銘柄は160以上。乾杯のシーンだけではなく、ガストロノミックワインとして食事に合わせたシャンパーニュの楽しみ方をご提案しています。シャンパーニュの魅力や奥深さ、そして文化をもっと多くの方に届けられたらいいな、と」。そう、内に秘めたシャンパーニュへの愛を静かに語る椨さん。

シャンパンを注いでいる
「細長いグラスを用いると、注ぐときにシャンパーニュの泡が弾けてしまいやすいので、香りを楽しむ点からも丸みのあるグラスをセレクトしています」。できる限り口の中で繊細な泡を楽しんでもらえるよう、グラスを傾け、斜めから静かに流し込むような注ぎ方を徹底している。


火入れした甲殻類には、香り高いロゼがよく似合う

続いて、秋メニュ―のひと皿には造り手のロマンを感じられる希少なロゼシャンパーニュを提案してくれた。

赤く鮮やかな料理とシャンパンボトル
「フランス産オマールブルーと洋梨 茄子とジロールのソテーに甘酸っぱいバルサミコ ソースビスク」。オマール海老の最高級ブランドであるオマールブルーを焼いた香ばしさをさまざまな風味とともに楽しめる一品。合わせたのは、1785年に創業し、フランス王妃マリー・アントワネットにも献上されたことでも知られる名門シャンパーニュ・メゾン「ハイパー・エドシック」から独立したブランド「レア・シャンパーニュ ロゼ2007」。メゾンの中でも“究極の贅沢”と謳われる1本だ。


「『レア・シャンパーニュ』は醸造長が特に納得した年に造られるシャンパーニュ。 1976年の初リリース以来、長い歴史の中でも生産数はごくわずかで、9度めにして初めてロゼが造られたという、非常に貴重な1本です。甲殻類全般に言えることなのですが、火入れしたものは香ばしく、特にロゼとの相性が良いですね。今回のお皿では、オマール海老の切り身に挟んだフレッシュな洋梨が、風味豊かなレア・シャンパーニュを引き立てています」

ひと皿をパレットに見立て、野菜で秋の紅葉を表現

さらに、メインには秋の紅葉を感じる詩情溢れる、目にも嬉しい一品が。

グリルした牛肉とイチョウの意匠が秋らしいソース
「鹿児島県産黒毛和牛のグリエ シュールージュのコンポートとシャテーニュ落ち葉散る野菜のパレット トリュフソースと共に」。口の中でゆっくりと溶けていく和牛とトリュフソースの芳醇な香りがふわりと広がる、メインでありながら、軽やかにいただけるエレガントな味わい。


「フィリップシェフは『パレットレギューム』と言っているのですが、皿をパレットに見立てて、ビーツや大根などをピクルスにしたものを舞い散る紅葉として表現しました。シェフは日本の四季折々に変化する情緒を愛しているので、自身が見た風景や想像した世界を繊細に織り交ぜることを大切にしています。また、和牛は、強火で一気に色をつけたあとはゆっくりと火を入れ、隅々までジューシーな味わいを楽しんでいただけるようなしっとりとした質感に仕上げました」

ピンクの皿に盛り付けられたデザートとピンクの包み紙のシャンパン
デザートは「無花果とハイビスカスのババ フロマージュブランのパンナコッタとハイビスカスのジュレ」。ハイビスカスのハーブティーから香りを抽出して作った爽やかな風味のジュレ、酸味のあるフロマージュブランを使ったパンナコッタを絡めてさっぱりといただける華やかな一品。合わせたのは、「デュヴァル=ルロワ」というシャンパーニュ・メゾンによる、軽快な酸味と共にほんのり甘みを感じるシャンパーニュ。ラズベリーのような香りが華やかに立ち上がり、長い余韻を楽しめる。


食事にもデザートにも、一杯のシャンパーニュがあるだけで、高揚感や幸福感がぐっと深まり、豊かな時間を過ごすことができる。特別な日のお祝いのディナーに、そして、新たな一歩を踏み出すためのエネルギーチャージとして。いつかは、シャンパーニュ地方を旅することを思い描いて、料理との幸せなマリアージュを体験してみてほしい。



「フィリップ・ミル東京」
東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガーデンテラス 4F
☏ 03- 5413-3282
営業時間
Lunch: 11:00∼15:30 (L.O.14:00)
Dinner: 17:30∼23:00 (L.O. 21:00)
※当面の間は(L.O.20:00)

Lunch:〈La Découverte〉5,082円
(プティサレ、前菜、メインディッシュ、デザート、コーヒー)
上記をはじめ、いくつかのコースを用意

Dinner:〈Le Plaisir〉12,100 円
(プティサレ、アミューズ、前菜、魚料理、肉料理、デザート、コーヒー)
上記をはじめ、いくつかのコースを用意

グラスシャンパーニュ ペアリングセット
Charmes(80ml×3杯) 5,808円〜
Luxe(80ml×3杯) 8,712円〜

※料金はすべて税・サービス料込

休 無休
https://www.hiramatsurestaurant.jp/philippe-mille/

撮影/上原未嗣 構成・文/矢島聖佳

※新型コロナウイルス感染症対策として、「衛生管理」「ソーシャルディスタンス」「換気」の3つの視点から作り上げた安全基準「Hiramatsuスタンダード」(https://www.hiramatsu.co.jp/standard/ に沿った安全対策を実施。オゾン除菌脱臭器(エアバスター)を設置した空気清浄など、消毒の徹底を行なっている。

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