町おこし
(画像=ehime2020/stock.adobe.com)

総務省が8月5日に発表した住民基本台帳に基づく人口動態調査は、2020年1月1日時点で、前年に比べ日本人住民が増えたのが「東京都」「神奈川県」「沖縄県」の3都県のみであることを示しました。なかでも東京の一極集中が顕著ななか、政府が掲げるデジタルを活用した地方政策、そして町おこしに取り組む地方自治体の成功例を紹介します。

東京一極集中は深刻な問題につながる恐れも

最新の総務省の人口動態調査(2020年8月5日発表)は、日本人住民が増加している都道府県が「東京都」「神奈川県」「沖縄県」のわずか3都県のみと、人口減少の実態を浮き彫りにしています。

そのなかで、東京都は前年比の人口増加数が1,325人、人口増加率は0.52%といずれもトップでした。人口増加率だけを見ても沖縄県の0.16%、神奈川県の0.05%を大きく上回る数字で、人口の“東京一極集中”の傾向が続いていることを示しています。

東京への過度な人口集中は地方経済の衰退につながるだけでなく、大災害発生時に社会的機能が麻痺するリスクが高まるといった、深刻な問題を引き起こします。こうした社会課題を解決するために、政府はデジタル技術を活用した地方への機能分散・人口分散を目指しています。

政府が打ち出す地方移住・定着の方策

政府は2020年7月に「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」を閣議決定しました。そのなかで、新型コロナウイルス感染防止を踏まえた「新たな日常」に対応した地域経済の構築と、東京圏への一極集中の是正を掲げています。その方策の1つに、「地方への移住・定着の推進」があります。具体的な取り組みは、以下の3つです。

東京一極集中是正への取り組み1:地方大学の産学連携強化と体制充実

地方大学には、より多くの若者を地元に定着させながら、地域経済を支えられる基盤になっていくことが求められます。しかし、東京圏の大学への進学者のうち3割が地方出身者です。基本方針では、地元の公共団体や産業界を巻き込んだ「産学連携強化」などを通じ、地域のさまざまなステークホルダーにとって魅力的な地方大学を目指していくと述べられています。

「体制充実」の内容としては、ニーズが高まるSTEAM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)人材の育成に必要な地方国立大学の定員の増員や、オンライン教育を活用した国内外の大学との連携などを地方大学が実現していくことを盛り込んでいます。

東京一極集中是正への取り組み 2:リモートワーク推進等による移住等の推進

新型コロナウイルスの感染リスクを高める3つの密(密集、密接、密閉)を避けるには、リモートワークが有効です。そこで政府では、地方におけるサテライトオフィス開設の支援などでリモートワークを広げていくことで、地方への移住者を推進します。

ちなみに内閣府が実施した意識調査では、すでに全国で約3割以上の就業者がテレワークを経験しており、同時に地方移住や副業、ワークライフバランスの充実への関心が高まっているようです。

具体的には、東京の大企業などを対象に、地方への仕事の移転、社員の地方移住への機運醸成に向け、経済界、関係省庁との連携体制を構築するとしています。

そのほか「地域プロジェクト参画型」や「ワーケーション型」など地方創生に貢献し得るリモートワークを期待し、東京企業のサテライトオフィス誘致に取り組む地域を支援する考えも示されています。

東京一極集中是正への取り組み3:Society 5.0の推進等による地域の魅力の基盤の創出

地方への新しい人の流れをつくるためには、地域が抱える人口減少や災害などの課題を解決しながら、企業や若者にとって魅力ある環境を整備する必要があります。

この難題に対し、基本方針では政府が目指す「Society 5.0」を推進する方針です。Society 5.0とは、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」を指します。そして、先行的にSociety 5.0を社会実装する場がスマートシティ/スーパーシティです。これらが地方の課題解決能力と魅力の向上につながると考え、実現に向けた構想が進んでいます。

「倍返し」で観光客増!犬山市の町おこし

いまや、国を挙げて人口の地方分散を重要視している現状が理解できたと思います。一方で、自治体主導の町おこしも盛んに行われており、話題になった成功事例もいくつもあります。その1つが愛知県犬山市のケースです。

犬山市の町おこしのきっかけとなったのは、いま続編が盛り上がっているドラマ「半沢直樹」です。おなじみのフレーズ「倍返し」がユーキャン新語・流行語大賞にも輝いた2013年、愛知県犬山市の三光稲荷神社は大きな話題を集め、各地から人々がつめかけました。その理由は、この神社には池の御神水でお金を洗うと数倍になってご利益があると信じられている「銭洗い池」があり、そこから「倍返し神社」と呼ばれるようになったからです。

この「倍返し神社」はパワースポットとして特にインスタグラムで拡散され、若い女性を中心に人気が出ました。加えて、犬山市ではもともと地道な町づくりの活動も実施していました。「半沢直樹」ブームの追い風もありつつ、犬山市が本来持つ歴史ある城下町の価値に気づく人々が徐々に増え、シャッター街になっていた城下町にも新しい店が次々にオープンする人気観光地へと変貌したのです。

国宝である犬山城の魅力を武器に、この夏も「明智兼光と長久手合戦」という企画展を開催するなど、町おこしに力を入れている犬山市。平成26年からの5年間の人口統計を見ると、出生者から死亡者を引く自然増減の影響で全体としては減少傾向が見られるものの、市外への転入数から転出数を引いた社会増減は、平成27年から平成30年まで4年連続で増えています。

魅力的な地域が全国各地にある

愛知県犬山市は、地方自治体の地道な取り組みが状況を好転させた事例といえるでしょう。ほかにも衰退した観光地というイメージを持たれていた静岡県の熱海市は、地元から熱海ファンをつくる取り組みを通じて奇跡の復活を遂げています。熱海でも、平成25年度から29年度の5年のうち、26年を除き社会増減がプラスになり、特に統計の最新の値である29年は社会増減が10.1%増と大幅に伸びています。

東京一極集中の弊害は、災害など有事の発生ではじめて気づくかもしれません。新型コロナウイルス感染症は猛威をふるいながらも、リモートワークなど新しい働き方、暮らし方を見直す契機にもなっています。いまだからこそ、東京の一極集中から視野を広げ、全国各地の魅力ある地方に目を向けていきたいところです。

文・J PRIME編集部

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