経営力
(画像=jonas glaubitz/stock.adobe.com)

新型コロナウイルス感染症の影響により、従来のビジネスの常識が根底からひっくり返ろうとしています。テレワークなど新しい働き方の普及に伴い、人と対面できない分、一層他者への気遣いや助け合いの精神が求められています。

従来とは異なる経営環境で生き残るために、今後の経営者に求められる指針として「ノブレス・オブリージュ」が注目されています。ここでは、アフターコロナにおける経営の新標準になるキーワード、ノブレス・オブリージュについて解説します。

ノブレス・オブリージュとは

ノブレス・オブリージュとは「権力や財産を持つ人は社会的な義務を負わなくてはならない」という考え方です。フランス語の「貴族(Noblesse)」と「強いる(Obliger)」を組み合わせた造語で、欧州では広く知られている考え方です。

財産や社会的な地位を持つ人は、自己犠牲の精神を持ち、貧困などの社会的な課題の解決に取り組まなくてならないとする価値観です。マイクロソフト元会長のビル・ゲイツ氏が妻のメリンダ氏とともに、世界最大と言われる慈善団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」を創設していることが例として挙げられます。

日立製作所の社長兼CEOを務める東原敏昭氏は、コロナ渦で経営者が実施すべきこととして、キャッシュフロー経営、構造改革に加え、企業活動と社会との関わり方を明確にすることを挙げています。「自分たちの取り組みが社会や環境にどれくらい貢献しているのかを明確にする」ことで、従業員のやる気をさらに引き出せると話しており、これも「ノブレス・オブリージュ」につながる考え方といえるのではないでしょうか。

欧米や日本を中心とした世界経済が成熟する一方で、環境破壊や貧困など、負の側面が明らかになっています。これに伴い、私利私欲を追うだけでなく、他人のために自己犠牲を伴って行動する精神がなければ、人々、そして市場の支持を得られなくなっているという背景もあります。

インターネットの発達で経営者の行動がガラス張りに

ただ、他人のために行動することが求められる理由として、もう少し具体的な理由があります。それは急速なインターネットの普及です。インターネットの普及以前は、経営者の行動が家族や従業員などの身近な人を越えて広がることはあまりありませんでした。そのため、私利私欲に走る行動や株主に損害を与える経営を行っていても、それが表沙汰になることも少なかったといえます。

SNSの普及で経営者の問題行動は瞬時に広がる

しかし、インターネットが普及した昨今では、TwitterやFacebook、YouTubeなどのSNSなどを通じて、特定の個人の行動が全世界へとあっという間に拡散するようになっています。経営者の問題行動も狭い範囲では収まらず、その人が有名であればあるほど、世界の隅々まで瞬時に情報が飛んでゆく世の中になりました。

実際に、元日産自動車会長のカルロス・ゴーン氏の特別背任や会社の私物化といった行動は、ニュースとして世界を駆け巡っただけでなく、日本から不法に逃亡した際の映像などさまざまな付随情報を含めて、一瞬にして世界中に共有されてしまったのです。

私利私欲ではなく、相手の利益を優先にできる経営を

現代は、隠れて私欲をむさぼり、それが知られることになれば、完膚なきまでに打ちのめされ、社会的な信用力を失う構造となっているのです。それであれば、本当の意味でいつでもフェアであることを突き詰めるのが、結果的には正解ということになるでしょう。

つまり、環境や貧困問題といった人類の発展段階としての要求だけでなく、実利的な意味でも、ノブレス・オブリージュの精神を持って突き進むべき時代にさしかかっているといえます。簡単なことではありませんが、自身の利益よりも、従業員や地域社会の住民、引いては困っている人たちの利益を最優先にできる経営者であれば、取引先や顧客から根強い支持を得られます。

ノブレス・オブリージュに基づく経営力はアフターコロナの新標準

現代の企業経営では、社会的課題の解決によってより多くの人々の支持を得るという側面と、インターネットの普及によってガラス張りになった環境で、リスクを回避しながら存続していくという両側面を満たす必要があります。

これを満たそうとした時に必要な概念は、まさにノブレス・オブリージュなのです。自身の利益を最優先にするのではなく、株主、従業員、顧客、社会全般など多岐にわたるステークホルダーの利益を常に意識することで、長期的な事業継続の道が見えてくるのです。

企業にとって「なんとなくきれいな言葉」では済まされないキーワード、それがノブレス・オブリージュなのです。

文・J PRIME編集部

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