
仕事や趣味に没頭するための書斎を自邸に持つことは、今も昔も男のロマンと言える。自分好みの家具や本、コレクションに囲まれた空間は、まさに胸を高鳴らせる“大人の秘密基地”。今回はそんな理想の書斎作りを叶えるための家具を探しに、フランス第二の都市リヨン郊外にある、フランスでも屈指の大きさを誇るブロカント〈LES PUCES DU CANAL(レ ピュス デュ カナル)〉を訪れた。
時代を超えて愛されるものを求めてブロカントへ
新しく家具を新調する際に、経年変化で増す魅力や一期一会のアイテムを求め、ブロカントに足を運ぶフランス人は多い。ブロカントとは、骨董品や古道具を扱う店のことで、転じてそれが集まった蚤の市もそう呼ばれている。欧州では真新しいもの以上に、時代を経ても魅力的であり続ける普遍性のあるデザインを愛し、それに価値を見出し、資産として大切にする風土もあるだろう。
特に自邸にビュロー(書斎)を持つことは、フランス人にとっても夢であり、その空間作りに力を入れる人も少なくない。いわば必要不可欠ではない部屋だからこそ、遊びを盛り込めるし、自分らしさにとことんこだわれるというもの。そんな時にこそ、フランス人は一点ものに出合えるブロカントを訪れるのだ。

国内2番目の規模を誇るリヨンのブロカント
今回訪れたリヨン郊外にある〈LES PUCES DU CANAL〉は、パリ郊外のクリニャンクールに次ぐ、フランス第二の規模を誇るブロカント。「なんだ、第二の規模か」と侮ることなかれ。パリに比べるとお値打ち価格で提供されているため、ここには地元っ子に加え、世界各国のバイヤー、そしてパリの骨董商までもが買い付けにくるのだ。
5.5ヘクタールの敷地内に約200軒の屋内常設店舗と400を超える露天商が一堂に軒を連ね、食器や家具、本、レコード、アートなど、あらゆるアンティーク品を一度に見ることができるのが魅力で、時間を有効に使いたい観光客には嬉しい限り。


デスクならエグゼクティブたちが好む60年代の北欧家具に注目
ブロカントと聞くとかなりカジュアルな印象を受けるが、この〈LES PUCES DU CANAL〉には、選りすぐりの高級アンティークを取り扱う店も多い。
例えば、書斎づくり欠かせないデスクなら、ミッドセンチュリーの時代の空気を感じる、上質な60年代スカンジナビアスタイルが大人の男性に人気だという。当時、医者や弁護士などエグゼクティブたちがこぞって取り入れたというシンプルかつ繊細な美しさを感じさせるデスクは、日本人の美意識にも寄り添い、日本の住空間ともマッチする。〈LES PUCES DU CANAL〉内の数ある骨董商の中でも同地に2店舗を構える〈Galerie du Future(ギャルリー デュ フュチュール)〉は、洗練されたスカンジナビアスタイルの家具が多数そろう名店だ。



重厚なエレガンス薫るナポレオン3世時代のデスクは、正統派を愛する人に
フランスらしい重厚な優雅さを求めるなら、ナポレオン3世時代のアンティークを中心に取り扱う店で見つけたデスクはいかがだろう。合わせるチェアや書類ケースなど、小物にもこだわり、徹底的にフランスのエレガンスに浸ってみるのもいい。

書斎に個性を加える優雅なデザインのライトたち
フランス人たちは室内の光にとてもこだわる。居心地の良さを追求したい書斎なら、なおさらのこと。
このブロカントでは、たくさんの見目麗しいアンティークライトに出会うことができる。デスク周りや部屋のコーナーに、ユニークなデザインを取り入れて見るのも、面白い。カラフルなランプシェイドのついたものや、幾何学的なシェイプのものをインテリアのアクセントに取り入れれば、ダークな色に偏りがちな男の書斎に新鮮な空気を運んでくれるだろう。


アンティーク小物やオブジェで遊び心を感じさせる空間に
さらにアンティークのレターケースやデスク下に敷く絨毯、オブジェになるクラシックな置き時計やタイプライターなど、デスク周りの小物にも気を配れば、キラリとセンスの光る書斎が手に入るだろう。さらには欧米の遊び心溢れるオフィスにあるような年代もののテーブルフットボールゲームなどをデコレーションするなど、店巡りをしているだけでインスパイアされ、アイディアが次々と浮かび、空間作りの夢が膨らんでいくのもブロカントの魅力だ。
買うも良し、インスピレーションのために訪れても良し。ヨーロッパアンティーク好きのためのワンダーランドがここにある。


LES PUCES DU CANAL
〈レ ピュス デュ カナル〉
5 rue Eugène Pottier 69100 Villeurbanne
☏+33 (0) 4 69 85 66 28
営業時間
木・土曜日7:00〜13:00
日曜日7:00〜15:00
※ご紹介のアイテムは撮影当時のものであり、アンティークは一点もののため、来店時に完売していることも予想されます。
撮影/Olivier Leroy 構成・文/ルロワ河島裕子