ティーペアリング,sio

最近、コース料理のひと皿ごとに趣向を凝らしたお茶を合わせる“ティーペアリング”が人気だ。東京・代々木上原駅からほど近いレストラン『sio』(シオ)は、オーナーシェフ鳥羽周作さんによる和・洋・中といったジャンルにこだわらない素材の本質を見極めたイノベーティヴな料理と、ソムリエの亀井崇広さんが作り出す食事の美味しさを引き立てるティーペアリングが魅力の店。絶妙なマリアージュに心和らぐお茶の時間をお届けします。

料理の味にふくらみをもたらすティーペアリングの力

「お酒を飲めない人にもやさしい店でありたい」という鳥羽シェフの熱い想いから、ランチとディナーでティーペアリングを楽しめるサービスを展開しているレストラン『sio』。

sio,鳥羽
「ティーペアリングは、お酒を飲めないお客様への愛情表現だと思っています」と鳥羽さん。


「お酒を飲めない人と飲める人が一緒に楽しめる店にしたかったんです。特に男性がお酒を飲めなくて、女性がお酒好きという場合、ちょっと気まずかったりすることもありますよね。お酒に比べて、食事を楽しむためのソフトドリンクはバリエーションが少ない。でも、オリジナルのブレンドで作ったお茶と食すことで、料理の味により一層ふくらみが生まれるんです。お茶好きはもちろん、食事のあとに仕事をしなくてはいけなくて、アルコールが飲みたくても飲めない方にもおすすめです」と鳥羽さん。

sio,食事
ランチコース7皿7,000円、ティーペアリング4杯4,000円。ディナーコース 10皿10,000円、ティーペアリング6杯6,000円。お茶の芳醇な香りを感じられるように、ワイングラスやウィスキーグラスに注いでサーブされる。


鳥羽さんの料理は、日本料理のだし文化の趣がある一品、小麦粉の甘さを感じるパスタ、中華やエスニック的なエッセンスを押し出したものなど、ジャンルにとらわれない自由な発想が特徴的。対して亀井さんは「ソムリエはワインのみならず、飲み物全般を提供する仕事である」という持論のもと、自らさまざまなお酒やお茶を嗜むことで、味の違いや特徴を体得してきた。料理の味を引き立てる茶葉の性質を鑑定するセンスは流石。いくつかの料理店で料理人とホールサービスの経験で培ったハーブやスパイスの使い方の引き出しも非常に豊かだ。

食事中は、料理にピタリと呼応する一杯をそっと差し出し、ブレンドの内容やおすすめの飲み方を教えてくれる。緻密な計算の上に作られた料理とドリンクが織りなす世界観は、どれも見た目からは想像できない香りや味わいで、驚きに満ちている。

sio,亀井
飲食業界に携わって17年。5年目でソムリエの資格を取得。かつてさまざまな店で料理人として研鑽を積んだ亀井さん。豊富な経験による引き出しの多さで、料理の味にひとひねり加えるお茶やワインのペアリングを生み出す。


果汁やハーブ、スパイスの香りを楽しめる個性豊かなお茶を

「茶葉は長年パートナーシップを組んでいる業者さんがおすすめするものから香りや味わい、うまみが気に入ったものを選んでいます。ティーペアリングを始めた当初は、良質な茶葉から水出しやお湯出しストレートティーを提供していました」と亀井さん。料理とのペアリングを突き詰めていくうちに「もっと個性を出したお茶を組み合わせたい」と思うようになったという。 「東方美人などの高級な茶葉は、そのまま飲むことが一番美味しい場合が多いので、ストレートティーでお出しします。定番的な茶葉やハーブはブレンドすることで、味や香りに奥行きが生まれる面白さがありますね」

スペシャリテの馬肉料理には、ハーブや果実の皮の香りを抽出したハーブウォーターとお湯出しした春摘みダージリンを合わせ、炭酸ガスを注入したスパークリングティー。前菜には、ホーリーバジルとトマトのような酸味のある香りを醸すローズヒップのブレンドティー。さらに、ドライにした果実の皮や花びら、特殊なスパイスやハーブ、果汁の香りをアクセントにした一杯なども。組み合わせのバリエーションはもはや無限。2カ月ごとにコースメニューが変化するたび、料理にフィットしたお茶が楽しめる。

ダージリン,スパークリングティー
スターターは春摘みダージリンとハーブウォーターをブレンドしたスパークリングティー。「お湯で香りや風味を抽出した後に氷で締め、ソーダサーバーで炭酸ガスを加えることで、色みや香りがキープできてクリアな味わいになります」と亀井さん。


素材の組み合わせや温度管理などで味のバランスを調える

ローズマリー,ティー,ネーブルオレンジ
柑橘の果物のなかでも特に香りが強いネーブルオレンジの皮をローズマリーとともにポットへ。それぞれの香りをお湯で抽出。


ティー,炭酸ガス
ブレンドに使う素材の組み合わせだけではなく、温度管理や炭酸ガスを加えるといった、ひと手間も大切にしている。


一杯めはスパークリングワインのように爽やかに飲めるものから。ほのかな炭酸と柑橘の爽やかな香りが心地よく、コース料理が始まるワクワクが増幅する。 「お茶のベースは、若々しい爽やかな香りが特徴的な春摘みのダージリンをチョイスしたのがポイントです。例えば、アールグレイはベルガモットで柑橘系の香りをつけた紅茶なので、もともと香りがついていない茶葉を選んだ方が、ネーブルオレンジの皮とローズマリーで抽出したハーブウォーターと引き立て合うことができます」

互いを引き立て合う素材のチョイス、香りの抽出、温度管理などのステップを経て、ブレンドティーにさらなるマジックがかかる。春摘みダージリンとハーブウォーターをブレンドしたスパークリングティーは、実際口に含むと、素材の香りが混ざり合い、ジンジャーエールのようなさわやかな香りがふわりと広がる。春摘み特有の風味と繊細な渋みはとても上品だ。

ホーリーバジル,ローズヒップ
2つめのペアリングのお茶は、ホーリーバジルとローズヒップをブレンドすることでトマトのような酸味のある香りを生み出す、ブレンドハーブティー。


前菜,ティー
ブレンドハーブティーを合わせた前菜。イタリア産のドライトマトから水出しで抽出したスープに浸した押し麦、カツオの漬け、ブッラータチーズ、レタス、オクラ、トマト、薬味を巻いた生春巻き。「さまざまな食感、甘さ、酸味、スパイスが渾然一体となった一品。ひと口で召し上がっていただくと、複雑な味が楽しめてとても美味しい。素材のうまみが強いので、口直しにさっぱりと流してもらう一杯を心がけました」と亀井さん。


そして、イタリアン出身の鳥羽さんが作るコースは、パスタなど小麦粉を使ったものが必ずひと皿あるという。この日はショートパスタのペンネアラビアータだ。

アラビアータ,ブレンドティー
ペンネアラビアータに合わせたのは、辛さを切るような爽快感を味わえるブレンドティー。


「アラビアータは、スパイスが効いたシャープな辛さが特徴的なので、調和させるというよりも、味覚をリセットさせるようなペアリングを目指しました。口直しとして飲んで、また辛いのを食べたくなる。その繰り返しが心地よい甘くない大人の《スプライト》のようなイメージです」

アップルピース
大人の《スプライト》のようなブレンドティーに使用した材料。バラの甘い香りがするローズレッドとリンゴを乾燥させたアップルピース、ティムルというパッションフルーツのような香りがするネパールの山椒をアクセントに。そして、フレッシュなマジョラムとライムを加えた。さわやかでありながら、甘さも存在する複雑な香りが魅力。


清涼感のあるブレンドティーは、ボタニカルな香りを放ち、記憶に深く刻まれるインパクトがある。 「ドライハーブや果実をお湯で抽出した後に硬水で和らげてあげると、味がまろやかに。ミネラルが豊富に含まれる硬水で抽出することで、塩気や冷涼感が増して味に奥行きが出ます。さらに、炭酸ガスを入れて、フレッシュなライムを絞ると、お茶全体の酸味と甘みのバランスが調います」

素材同士の組み合わせの妙や食感の心地よさを大切にした料理と五味を整えるようにコントロールされた緻密に考えられたティーペアリング。お茶に対する価値観を広げてくれる、芳しい香りの心地よさに包まれる贅沢な一杯とともに、“美味しい時間”を楽しんでみてほしい。



sio

東京都渋谷区上原1-35-3
☎︎ 03-6804-7607
Dinner 17:00〜20:00
Lunch [土、日、祝] 12:00〜14:30(LO 12:30)
休 水曜日、不定休
http://sio-yoyogiuehara.com/

※新型コロナウイルス感染症対策として、店内やスタッフの除菌の徹底、営業中のマスク着用、スタッフの検温などを行なっている。

撮影/上原未嗣 構成・文/矢島聖佳

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