AR,AI,音楽テック
(画像=zapp2photo/stock.adobe.com)

CDを最後に聞いたのがいつだったか、はっきり思い出せないくらい、音楽を取り巻く環境は急速に変化しています。この変化を生み出しているのが、音楽とデジタル技術を掛け合わせた「音楽テック」という概念です。テクノロジーが音楽に影響を及ぼし、音楽鑑賞の文化そのものが大きく変容する現象が起こっており、そこに新しいビジネスチャンスが次々と生まれています。音楽とテクノロジーが掛け合わさったこの業界で、いま、いったいどのような現象が起こっているのでしょうか。

エレクトロニック・ダンス・ミュージックの祭典「ULTRA Japan」

ULTRAJapanは、アメリカ発の都市型エレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)イベントです。1999年アメリカのフロリダ州マイアミで始まり、ヨーロッパ、アジア、アフリカなど、いまや世界五大陸を網羅するビッグイベントになりました。日本には2014年に初上陸、2016年には12万人の参加者を集めています。

このイベントには国内外の著名DJが集合し、東京・お台場で、音楽とテクノロジーが合体した産物の代表格ともいえるEDMの巨大なライブ祭典が繰り広げられます。

広報活動には通常の媒体を使わず、SNSだけを使用して情報を広げるのが特徴です。それでもチケットは完売。ライブの模様をネットで生配信することで、その「すごさ」を加速度的に広めることに成功しました。

普通のコンサートなら当然NGである参加者による動画撮影やSNS投稿もOKです。これまでのライブエンタテインメントの在り方を破壊するような新しい音楽の形となっています。

アマゾン、フェイスブック、インスタグラムが新たな取り組みを展開する

アメリカの有名な音楽プロデューサーで、DJであるマシュメロは、シンガーソングライターのホールジーと一緒に新曲を発表しました。その発表の方法がユニークでした。TikTokのフォロワー数世界一を誇る16歳の女子高生、チャーリー・ダメリロに依頼し、同時にアマゾンのアレクサを使い、同社のスマートスピーカーに「マシュメロ(またはホールジー)はいま何を考えているの」と話しかけると、セレブリティの胸の内を聞けるというキャンペーンを繰り広げました。

ところが、このマシュメロのアレクサを使った企画が発表された同日に、フェイスブックとインスタグラムも、音楽テックに関係する新機能を発表しました。

インスタグラムは、人の顔にネコ耳やひげを自動で付けるなどの「Spark AR」と呼ばれる機能をリリースしており、広く利用されています。これに音楽と同期する機能を付け加えました。Spark AR Studioというアプリを使えば、動画に音楽と同期して動くAR効果をだれでも手軽に付け加えることができます。

ファイスブックもユーザー同士による動画の組み合わせで新しい動画コンテンツがつくれる「Collab」というアプリの開発を発表しました。動画コンテンツのマッシュアップによりオリジナル音楽や動画をつくれるもので、これらによって、いろいろな動画コンテンツによりオリジナル音楽の拡散が期待され、音楽の発表の場、発掘の場となりそうです。

音楽テックの進化を促進する「DEMO DAY」

著名な大手企業が集まるアクセラレータープログラム「Techstars」は、新たな切り口を持つ起業家を発掘すべく2017年から音楽専門のプログラムである「Techstars Music」を開始していましたが、その存在が最近になって際立ってきています。

「DEMO DAY」はTechstars Musicが主催するイベントで、新進気鋭の起業家たちが、投資家や音楽業界関係者たちにプレゼンテーションする場です。Techstars Musicは、毎年10社を選んで12万ドルずつ投資しており、候補に選ばれた起業家は、DEMO DAYに向けて3ヵ月間いろいろなプログラムに挑戦します。その間、世界各地の音楽関係者、テクノロジー関係者などに師事でき、通常では得られないような幅広い知見を得た上で、製品の開発に弾みをつけ、市場に参入していくというわけです。

十分な支援を受けた起業家たちは、AI作曲システム、バーチャルアーティスト開発、VRでDJができる環境構築など、未来の音楽業界を作っていく技術を次々と市場に登場させていくでしょう。

世界的な規模で動く音楽テックが世界に影響を及ぼす

テクノロジーの応用範囲で最も影響が大きいのは、やはりエンターテインメントです。コロナ禍でだれもが自宅にこもったこの数ヵ月間で、最新テクノロジーの応用は一気に進みました。

特に、音楽テックは、人間に必要な感動、興奮、リラックスといった情緒的な部分に働きかけるものです。そこに注力するアーティストや技術者たちの感性が、世界の人々の心情に働きかける絶好の機会となりました。

ここまで見てきたように、音楽テックはインターネット上での人々の行動を動力としている点などで、従来型ビジネスとは大きく異なります。そのため、広く普及すれば、音楽産業に破壊的なイノベーションを起こす可能性もあります。テクノロジーと音楽のコンビネーションが、人々の行動をどのように変えていくのか。観る、聞くにとどまらず、ときには参加し体験するのもよいでしょう。

文・J PRIME編集部

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