高級バッグ,ドニャン

五感に訴える有機的な美しさと他にはない独創性で、今、世界の注目を集めるブランドがある。高級レース製造の名門ドニャン家のDNAを受け継ぐ、フランスのラグジュアリーを体現したバッグブランド〈DOGNIN(ドニャン)〉である。2000年の創業当初から作品がパリ市モード&コスチューム博物館(ガリエラ宮)に収蔵されるほか、トップアーティストたちとのコラボレーションなど、ファッションの世界を飛び出しアートとも強い繋がりを持つメゾン。これからの時代を象徴するモードの担い手をご紹介しよう。

“メイド イン パリ”にこだわることで生まれる伝統を超えるモダン

ドニャン,DAVID DEWEERD
アートは一つの表現形態であり、言語です。〈ドニャン〉にとってアートは単なる装飾ではありません。バッグ製作のしっかりした基盤が認められてこそ、アートとの“対話”が可能になったのです」(企画・運営担当ラフィク氏)。写真はベルギー人アーティストのDAVID DEWEERD(ダヴィッド・デウェールト)氏とのコラボレーション(非売品)。


フランスブランドといえど、デザインから製造までの全てをフランスで行うブランドはそれほど多くない。世界展開するブランドならなおさらだ。そんな今の世の中で、稀有な“パリブランド”に出合った。デザインから素材選び、そして製造まで、一貫してパリで製作するバッグブランド〈ドニャン〉だ。世界でも屈指の地価と物価を誇るパリで、それを成し遂げるのには、相当の覚悟とこだわりが必要で、とてつもなく贅沢なことといえる。

ドニャン,アトリエ,スタジオ
再開発が進むパリ18区「グットドール」地区に、ショールーム、デザインスタジオ、そしてアトリエを構える〈ドニャン〉。「皮革製品の製造に必要な素材・部品をすべて入手できる街がパリだけであることも、私たちがこの街にこだわる理由の一つです」とデザイナーのリュック・ドニャン氏。


そのこだわりについて、デザイナーのリュック・ドニャン氏はこう語る。 「フランスは伝統的に中央集権の国であり、首都パリにすべてが集中し、現在でも多くのクリエーターが集まってきます。バーチャルな接触も可能な世の中ですが、素材に触れ、人々と直接に交流する実体験がなければ、“時代の空気”を感じさせるクリエーションはできません。2000年の創業当時は、製造コストの安い国外へ生産拠点を移転するのが大きな流れでしたが、一旦でも製造機能を海外に流出させると、国内にあった製造技術やノウハウ、設備が失われてしまいます。今再びフランス国内での製造に回帰する動きも出てきましたが、受け継がれたノウハウを次世代へ繋ぐことも、モードを担う者の使命でもあり、それがパリへの愛着を強くさせるのです」。

ドニャン,職人,制作
細かなディテールの始末は、職人による丁寧な手仕事で。ひとつのバッグを製作するのに、約1日半を要する。オールハンドメイドの特別なバッグには、約8日間を要することも。


今を生きるリアルな人たちに向けて、エレガンスと機能が融合したバッグを

リュック・ドニャン,ラフィク・マイウ,ソローニュ
物静かで思慮深く言葉を選ぶデザイナーのリュック・ドニャン氏(右)と、メゾンへの思いを語らせたら止まらない情熱に溢れた企画・運営担当のラフィク・マイウ氏(左)。2人の間にあるのは、シャンボール城の建築からインスパイアされた、オールハンドメイドのオートクチュールのようなバッグ《ソローニュ》。


〈ドニャン〉は、デザイナーのリュック・ドニャン氏と、企画&運営を担当するラフィク・マイウ氏によるブランドである。学生時代からの友人であるという二人は、互いの才能を生かしながら、他にはないスタイルを築いてきた。

それは“現代を生きるリアルな人たちのためのバッグ”を追求し、機能美や実用性を重視するもの作りの姿勢にも表れている。既存のバッグ製造の手法に固執しない両氏の発想から、補強材を使わない“ソフト・ストラクチャー”という独自の形状記憶技術を生み出し、フランスをはじめEU諸国や日本で特許を取得。素材の使用量を抑え環境負荷を少なくし、軽量に仕上げることで使用する人の負担を減らすという試みは、美しさと同様に実用性を求め、エコロジカルでサステナブルな世界を目指す現代人の意識にも呼応する。

その新技術は、今後ブランドのシグネチャーバッグのひとつである《ポロション》に取り入れられ、2021年シーズン以降に本格展開される見込みだ。世界中の女性にとって〈ドニャン〉の名品がさらに身近な存在となることだろう。

ポロション,ドニャン
シグネチャーバッグ《ポロション》「《ポロション》に取り入れられる特許技術の“ソフト・ストラクチャー”の特異性は、レザーと裏地を特殊な方法で接着する点にあります。その結果、裏地が補強材となってレザーに構造機能を与え、理想的なボリュームの丸みを帯びたフォルムが実現します」とラフィク氏。<大>(H25×W42×D18cm) <小>(H16×W23×D10cm)※2021シーズン以降の展開予定・共に価格未定


レース製造の名家出身のバックグラウンドを生かして

ドニャン,リヨンレース
現在は製造されていない希少なリヨンレースのストックを使用したトートバッグ(奥)と、カレーレースを使用したハンドバッグ(手前)。レースを知り尽くしたリュック氏のアイデンティティを感じさせる繊細な逸品。


ブランド名にもなっている〈ドニャン〉は、デザイナーのリュック氏の姓にちなんでいる。高級シルクレースの名門であったリヨンのドニャン家の跡取りとして生まれた彼は、幼い頃から美しいものに触れ、機械工業と手工業が融合した“古き良きもの作り”を目の当たりにしてきた。レース産業は時代とともに衰退してしまったが、その経験が今の〈ドニャン〉に大きな影響を与えているという。

カミーユ・ドニャン,二代目
デザインスタジオには、リュック氏の先祖でありレース製造会社〈ドニャン〉創業者の息子で、「リヨンのレース」の製造技法を発明した2代目のカミーユ・ドニャンの肖像画が。


「幼い頃はよく工場へ遊びに行きました。工場の一階には織機がありレースが織られ、二階では刺繍縫いの手作業が行われていました。フランスのレースには、『カレー』と『リヨン』の2大生産地があり、高級品とされるリヨンのレースは、織機で織り上げた後、必ず手作業で縁取りをするのです。私が手を使う職人仕事とモード&デザインの両方に興味を持つようになったのも、このレースと手縫いの刺繍の世界に触れて育ったことの影響が大きいと思います。レース作りとは何より“洗練の追求”であり、私はこの点に最も影響を受けたと思います。〈ドニャン〉のバッグの洗練は、このレース作りの精神から受け継がれたものなのです」。

“パリらしい”──それは最高の褒め言葉

ドニャン,マ
世界各国でベストセラーとなっている、センターが折れたデザインが特徴的なコレクション《マ》。軽量感や容量の大きさなど、高い実用性も多くの人を魅了する。左から<大>(H16×W36×D19cm)¥242,000 <小>(H13×W27×D14cm)¥132,000(共に税込)


トワネット,グム,ドニャン
2020-21年秋冬の新色は、秋らしいカラーとフレッシュなカラーのコンビネーション。左から《トワネット》(H20×W27×D7cm)¥93,500 《グム》(H13×W26×D17cm)¥150,700(共に税込)


これだけいろいろなデザインが溢れる世の中にあって、〈ドニャン〉のバッグには“唯一無二”といえる個性が見て取れる。特に独創的なフォルムと、思いがけない美しい色の取り合わせが見る人の目を奪うのだ。それは、人と同じであることを嫌いオリジナルであることを好むパリジャンたちの美意識と重なり合う。

そう伝えるとデザイナーのリュック氏は、笑みを浮かべた。

「私が人から言われてとても嬉しい言葉が二つあります。“パリらしい”、そして“他にはないフォルム”。それは〈ドニャン〉を表現する上で最高の褒め言葉です」。

他人の物差しではなく自身の価値観によって自分に相応しいもの、真にいいものを見極める審美眼が求められる今。〈ドニャン〉のバッグは現代人の感性に寄り添い、装いにアイデンティティとクラス感を与えるおしゃれの強い味方になってくれることだろう。

カランボル,ドニャン
布のショッピングバッグ(=エコバッグ)が入った《カランボル》(=スターフルーツ)という名のミニバッグは、2020−21年秋冬の新作。(直径10cm)¥55,000(税込)



DOGNIN(ドニャン)ショールーム
4 rue des Gardes 75018 Paris
www.dognin.paris

日本でのお問い合わせ
スカレラ ジャポン(日本総代理店)
dognin@scalera-japon.com,
☎︎070-2613-8513 (担当: 前川)

撮影/Olivier Leroy 構成・文/ルロワ河島裕子

>>大丸・松坂屋の5つの特別サービスとは?