葛和建太郎,ロレックス,サブマリーナ
ほぼ毎日、左手につけている〈ロレックス〉の《オイスター パーペチュアル サブマリーナデイト》。


116年の歴史を持つ、老舗朱肉メーカー〈日光印〉の6代目で、香水ブランド〈エディット〉のファウンダーである葛和建太郎さんが日々、行動をともにしているのは、高級時計メーカー〈ロレックス〉の腕時計。ただし、時計好きだから選んだわけではない。葛和さんが〈ロレックス〉を身に着ける理由。そこには、彼が大切にしている人生観が表れている。

父親から譲り受けたことで、手放せない極上品に

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18金イエローゴールドとステンレスを組み合わせた《オイスター パーペチュアル サブマリーナデイト》。文字盤は黒。


創業1905年。116年続く高級朱肉やスタンプ台を製造・販売する〈日光印〉の6代目であり、近年は香水ブランド を立ち上げて営む葛和建太郎さん。家業を継ぐ前は、レコード会社「エイベックス」に勤務。大学卒業後に新卒で入社し、プロモーターやディレクターとして、多くのアーティストとかかわってきた。 「ただ、子どもの頃からぼんやりと、いずれ自分が父の会社を継ぐのだろうな、とは感じていました。といっても両親からのプレッシャーは一切なくて、自分で勝手にそう思っていただけ。なので、レコード会社に入社したときの目標として5年以内に世の中の誰もが知るようなヒット作を作り、その後、ニューヨークで3年間働いたら帰国して家業を継ごう、と考えていたんです」 その社会人になったお祝いにと譲られたのが、〈ロレックス〉の腕時計だった。

結局、目標達成のため「エイベックス」には7年在籍。その間にニューヨークで働きながら滞在するための資金も貯まり、いよいよ「帰国後に継ぐつもりだ」と父親に告げたら、「継ぐつもりがあるならば、3年ではなく、創業100周年を迎える1年半後に戻ってきて欲しい。そこで後継者としてお披露目する」と言われたそう。それで急遽、予定を変更。「父親もまさか継ぐとは思っていなかったようでした。だから、レコード会社に就職が決まった際にも、家業のことは一言も言わず、〈ロレックス〉を譲ってくれたのだと思います。ただ、僕は時計にも車にもあまり興味がなかったんですけどね」

葛和建太郎,ロレックス,サブマリーナ
機械式ムーブメントに内蔵されたローターによって、腕の動きで自動的にゼンマイを巻き上げる自動巻き機構を搭載。


父親は反対に時計も車も大好き。社会人になった息子への記念にと、自身のコレクションから選んだのが、この《オイスター パーペチュアル サブマリーナデイト》だった。ところが、葛和さんはそれを一度断っている。 「なにしろ、こちらはまだ20代前半でロン毛にピアスでしたからね。さすがにこのゴールドの高級感は、自分には似合わないだろうと思ったんです」 そう父親に伝えたところ、代わりに〈ロレックス〉のなかでもシンプルな、シルバー色の《デイトジャスト》をくれることになった。

《デイトジャスト》も大切にしていたが、それから数年経ったころ。 「父が自分で《デイトジャスト》を使いたくなってきたので、やっぱりこれと交換してくれと言ってきたんです。その頃には僕も30代になっていたので、そろそろいいかもしれないと、ありがたく譲り受けました」 以来、毎日のように装着し、旅行用のアーミー仕様のもの以外、持っている時計はこれ1本のみ。

ファッションも、時計を軸に考える

今は会長職についている父親から、6年前に会社を承継。 「経営に携わるにようになって、やはり外見の体裁を整える必要も出てきました。そうはいっても、もともとアンチ・トラッドですから反骨精神は残っていて、着ているスーツも普通に見えて、モードな要素を取り入れたりしています。この時計はそんなファッションの軸になってくれるんです。また、昔は白黒かグラフィカルなものしか着ていなかったのですが、最近はもっぱら紺。スーツも紺ばかり作っています。紺と金って合うんですよね」

葛和建太郎,オリバーピープルズ
1987年にアメリカ西海岸で誕生したブランド〈オリバーピープルズ〉のメガネ。


葛和建太郎,ロレックス,サブマリーナ
学生時代は音楽とラグビーに明け暮れていた。腕にもほどよく筋肉がつき、時計が引き立つ。


蝶番やテンプルにゴールドがあしらわれている〈オリバーピープルズ〉のメガネも、時計に合わせて選んだもの。さりげなくゴールドを差し色的に使う。確かに、20代ではできないワザでもある。 「ゴールドは大人の色。僕はいま45歳ですが、大人になったからこそのおしゃれを楽しんでいます」

そうやって毎日使っていて感じるのが、一見、派手なようで強く主張をしない、品の良い時計だということ。けれど、一番の魅力はやはり父親から譲られたことだという。 「父からの歴史がつながっているというのが最大の価値だと思います。やっぱり僕自身では絶対に選ばない配色であり、モデルなんです。それでも受け継いだことで、ファッションでもふるまいでも、自分なりに時計に合わせようというアクションが生まれます。有名な人が使っていたらから買ってみようとか、高級だから欲しいというのではなく、父がくれたから使いたいんです。僕はものでも人でも、何かしらつながるご縁があると考えています。反対にご縁がないものは信用できない。浅くても深くても縁がつながるのは、自分が生きて、活動して生活をしているから。まさにそれが人生なんですよね。ちゃんと人生を歩んでいればちゃんとしたご縁もできる。この時計は、そんなことも教えてくれます。いずれは、会社を継ぐ継がないに関係なく、僕の息子にも譲りたいと思っています」

葛和建太郎,ロレックス,サブマリーナ
自身も、15歳の息子と11歳の娘の父親。この時計はいつか息子に受け渡そうと考えている。



葛和建太郎
Kentaro Kuzuwa
(プロフィール)
(株)モリヤマ代表取締役。代表的なプロダクトである高級朱肉「日光印」のリブランディングをするほか、2018年には朱肉に使われる香料を使ったフレグランスブランド〈EDIT(h)〉を立ち上げる。
http://edithtokyo.com/  http://nikkojirushi.com/

撮影/兼下昌典 構成・文/三宅和歌子

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