『teteria』紅茶マイスターに聞く。夏を涼やかにするアイスティーと道具のはなし。

紅茶は簡単に淹れることもできますが、実は淹れ方次第で風味も味わいも全然違うものなのです。ジメジメとした暑い夏、キーンと冷えたアイスティーが格別においしい季節となりますが、アイスティーはただ冷やせばいいと思っていませんか? ちょっとした手順をふめば、とびきり贅沢なアイスティーが作れます。その方法を、“紅茶屋”『teteria(テテリア)』のオーナーである大西進さんに、自ら撮った写真とともにご指南いただきます。

一番大事なのは“茶葉選び”。味の質はここで決まる。

紅茶好きの菓子研究家や料理家などプロフェッショナルからの信頼も厚い「teteria」オーナーの大西進さん。そういった方々とのコラボレーションイベントでは、紅茶の淹れ方を伝授することも多く、その優しい語り口とともに、彼の淹れる紅茶の深い味わいに魅せられたファンが後を立たない。「これからの季節、アイスティーを入れた水筒を持ち歩かない日はないですね」と語る大西さん。おいしい紅茶を淹れるために一番大切なのは“茶葉選び”と断言します。

『teteria』紅茶マイスターに聞く。夏を涼やかにするアイスティーと道具のはなし。
「アイスティーの淹れ方にも簡単なメソッドがあって、それを身につけたらどなたでもおいしく作ることができます」と大西さん。アイスティー専用のスリランカの細かな茶葉「ICED TEA」70g 1,080円。http://teteria.shop-pro.jp/


「何も意識しないで紅茶を淹れるのと、茶葉をきちんと選んで楽しみながら淹れるのとでは、味が全然違います。でもコツさえ覚えれば、だれもが簡単においしい紅茶を作れるのです。まずは茶葉選びから。紅茶の葉の形をざっくりと分けると、細長い大きな茶葉、細かい茶葉、丸い茶葉の3つの種類があります。大きな茶葉は、基本的にストレートティー向き。丸い茶葉はコクがあり、ストレートで飲むと渋みが強くなるのでミルクティーに向いています。細かい茶葉はストレートにもミルクティーにも向いています。そして僕が『teteria』でアイスティー用の茶葉としてお勧めしている『ICED TEA』は、主にスリランカの高地にあるヌラワエリヤで製茶された細かな茶葉を中心にブレンドしたもの。細かな茶葉は短い時間で強い味が出るという特徴があります。ほろ苦さがもたらすキリリとした爽快感は、アイスティーにぴったりの味わいです。オレンジがかった色味が美しく、濁りづらい茶葉でもあるので、初心者の方でも楽しみながら淹れられると思います」

まずはおすすめの茶葉から始めて、最終的には、渋みがある味わいが好きなのか、さわやかな香りのものが好きなのか、自分好みの紅茶の味を知ること。紅茶専門店に足を運んで、個人的な好みの味を伝えられるようになると、紅茶の世界がぐんと広がるはず。

「お茶の味わいは、スタートとゴールが直結しているもの。最初に欲しい味になる茶葉選びを明確にしておかないと、ゴールに辿り着けないと感じています」

作るのが思わず楽しくなる道具を選び、材料を正確に計量する。

紅茶をおいしく飲むためには、道具選びも肝心。機能性はもちろんのこと、好みのデザインのものを選ぶと、紅茶を淹れる時間が格別に楽しくなる。

『teteria』紅茶マイスターに聞く。夏を涼やかにするアイスティーと道具のはなし。
「メジャースプーンもいいですが、より正確な計量ができるデジタルスケールを使うと味が安定します」と大西さん。愛用しているのは「HARIO」のV60 ドリップスケール。「コーヒーのハンドドリップのためのスケールですが、タイマー機能もついているので、抽出時間も計測できて汎用性が高いんです」


「茶葉を選んだ後、次のステップとして大切なのは、材料をきちんと計量すること。例えば、500mlのアイスティーを作るとしたら、茶葉5g、熱湯250ml、氷(ロックアイスがおすすめ)250gがそれぞれの適量です。分量を増やしたいときは、この比率を守りながら作りましょう。茶葉の量が1g違うだけで味が大きく変化する飲み物です。味のばらつきをなくすために、道具が頼もしい味方になってくれます」

『teteria』紅茶マイスターに聞く。夏を涼やかにするアイスティーと道具のはなし。
熱湯と茶葉を入れて紅茶を抽出するためのポットと氷を入れる耐熱ビーカー。そして、細かな茶葉が落ちるのを防ぐために茶こしを準備。網の目が2重網よりさらに細かい、畳の目のような「たたみおり」を選ぶといい。


「材料と道具がそろったら、良質な水でお湯を沸かしましょう。アイスティーは、軟水を使うと茶葉の成分が抽出されやすくなり、おいしく飲めます。お湯はボコボコと大きな泡が出るまで十分に沸騰させるのがポイント。次に、茶葉を入れたポットに熱湯を注いで2分置き、紅茶を抽出します。ちなみに硬水はミルクティーを淹れるときに使うと味に重みが出るのでおすすめです」

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紅茶を抽出したら、氷を入れた耐熱容器に茶こしを通して一気に注ぐ。氷はロックアイスを使うと、ゆっくりと溶けていく様が美しく、目でも楽しめる。


『teteria』紅茶マイスターに聞く。夏を涼やかにするアイスティーと道具のはなし。
注ぎ終わったら、スプーンを使って手早く混ぜる。氷が溶け切ったら、キンキンに冷えたアイスティーが完成。


『teteria』紅茶マイスターに聞く。夏を涼やかにするアイスティーと道具のはなし。
透き通った紅い色に目を奪われる、アイスティー。注ぐグラスによって、アイスティーの表情も変化する。写真は大西さん愛用の〈yumiko iihoshi porcelain〉の《クリスタリンシリーズ》のグラス。


慣れてきたら、水の量や抽出時間を調節して好みの味を探ろう。

「茶葉とお湯と氷の量。抽出の時間。それらが味わいのバランスを作っています。キリリとした味よりもやわらかい味が好みなら、茶葉の分量を気持ち減らすといいでしょう。強い味が好きなら、茶葉の分量を少し増やすか、抽出時間を2分から3分に増やしてみてください。分量や時間のちょっとした違いの中で、さまざまな“味の違いのグラデーション”が存在します。自分なりに好きな味を探ってみると、もっとおいしい紅茶が作れるはずです。飲むグラスはお好みのものであればなんでも構いませんが、ワイングラスは注いだときの景色が美しいですし、ステムがあるとスマートな印象に。口が薄い作りのグラスは、より繊細な味を感じることができるので、ぜひ試してみてください」

紅茶の淹れ方を覚えたら、そのときの気分や季節の移ろいを感じながら茶葉を選ぶと、楽しみが広がります。軽やかな味わい、キレを感じる味わい、フルーティーな香りが立つもの。自分好みの茶葉を知り、丁寧に紅茶を淹れる。そんなゆったりとした贅沢なお茶の時間を過ごしてみてはいかがでしょう。

『teteria』紅茶マイスターに聞く。夏を涼やかにするアイスティーと道具のはなし。
紅茶の魅力を知ることのできる、大西さんおすすめの本。(写真右)『紅茶の絵本』(ミルブックス)は大西さんとイラストレーターの平澤まりこさんとの共作。(写真左)『図説 英国紅茶の歴史 Cha Tea 紅茶室』(河出書房新社)は、「英国にお茶が紹介された17世紀からこれまでの流れを学ぶことができる本。紅茶という飲み物の歴史的背景を知ることで、紅茶を取り巻くカルチャーにも理解が深められます」


大西進
SUSUMU ONISHI
(プロフィール)
大学卒業後、紅茶専門店勤務を経て、2005年に紅茶を中心とした茶葉の卸販売と紅茶の楽しさを伝える教室を開く紅茶屋『teteria』を、静岡県富士市で営業中。


『teteria』 

実店舗はなく、webshopで茶葉の購入が可能。イベントの開催情報はInstagramでチェックを。
http://teteria.shop-pro.jp/
https://www.instagram.com/teteria.onishi/?hl=ja

撮影/大西進 構成・文/矢島聖佳


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