『鮨 在』鮨職人とソムリエの、目利きと丁寧な仕事の“ペアリング”が話題の店。

昨年5月に東京・渋谷区の広尾商店街にオープンした「鮨 在」(すし ざい)。江戸前の伝統的な仕事をモダンに昇華させた極上の鮨と、そのおいしさを最大限に引き出す酒の「ペアリング」。その完璧な結びつきには、鮨職人とソムリエのキラリと光る互いの“表現”が感じられる。ぜひ、大切な人と訪れ、贅を極めた幸せな体験を分かち合ってみてはいかがだろう。

長年の信頼関係のあるソムリエだからこそ生まれる、鮨とワインの絶妙な相乗効果。

『鮨 在』鮨職人とソムリエの、目利きと丁寧な仕事の“ペアリング”が話題の店。
「在郷」という言葉にインスパイアーされ、お客様の“心の故郷”のような存在でありたい、と店名に想いを込めた大将の岡田貴裕さん。檜の香りが漂う清らかな空間は、都会の喧騒を忘れさせてくれる。


ミシュランの星をもつ六本木の『鮨 由う』で腕をふるった後、昨年満を持して自分の店をオープンさせた大将の岡田貴裕さん。人生の半分以上を料理の研鑽に費やしてきた岡田さんは、前職で同僚だった保坂卓さんを専任のソムリエに迎え、“鮨と酒とのペアリング”を押し出した店作りを考えた。

「最近は鮨店でもワインのペアリングを謳っている店はありますが、専任のソムリエがいる店は希少です。合わせる飲み物の選択肢があるほうが鮨の楽しみ方も広がりますし、食事の時間をより豊かなものにできるのではと思い、このスタイルでやっていこうと考えました」と岡田さん。

夜のおまかせコースはつまみが8品、握りは12貫ほどで20,000円。加えてペアリング付きにすると30,000円。大将が毎朝市場に行き、自身の好みの味を表現できる旬のネタを仕入れ、その日のメニューを決めていく。

「コースの一品目は、お客様の胃をいたわるメニューから始めたくて、季節の素材を使った茶碗蒸しをお出しすることが割合に多いですね。冬なら、かぶら蒸しにすることもあります」

握りの最初に出すのは、鯛の稚魚である春子鯛(かすごだい)が多いという。

『鮨 在』鮨職人とソムリエの、目利きと丁寧な仕事の“ペアリング”が話題の店。
切り目も美しい春子鯛は、湯引きをした後に軽く昆布締めにした丁寧な仕事が際立つ一品。昆布の旨みを感じる口当たりのやわらかいネタと、赤酢で作ったマイルドなシャリとの一体感がふくよかな味わいに。


『鮨 在』鮨職人とソムリエの、目利きと丁寧な仕事の“ペアリング”が話題の店。
春子鯛に合わせたのは、長野県のワイナリー「ファンキー・シャトー」のセミヨンとソーヴィニヨンブランで造られた爽やかな酸味が残る白ワイン。


食べて、飲んで、を繰り返し ロマンチックな余韻が続く。

『鮨 在』鮨職人とソムリエの、目利きと丁寧な仕事の“ペアリング”が話題の店。
ソムリエの保坂さん。気になったワイナリーや酒蔵を訪れ、生産者と直接コミュニケーションすることも。大将が仕入れるネタに合わせてその日に出すペアリングを決めている。また、酒のみならず、鮨や料理に対する真摯な解説を支持するファンも多い。


「脂が乗っている春子鯛に合わせるワインは、キンキンに冷やしたものより少し常温に近いものを。今日は、自然派ワインの作り手による『ファンキー・シャトー』を選びました。大将が握る鮨は軽やかなので、ワインも樽仕込みのふくよかで爽やかな軽さを感じるのものを合わせたくて。うちの赤酢のシャリには『ファンキー・シャトー』のような少し樽の印象のあるワインのほうが、味に余韻や深みが生まれるんです」

鮨一貫に対するペアリングを懇切丁寧かつロジカルに説いてくれるソムリエの保坂さん。大将の握る鮨と保坂さんのセレクトによる酒の“完璧な調和”は、二つの異なる楽器が美しくエレガントに響き合うさまにもよく似ている。そんな極上の時間を体験をしようと、同業者やワインスクールに通うワイン愛好家が多数訪れているという。

続いて出してくれたのは、とびきりモダンで贅沢な毛ガニとバフンウニの海苔巻きだ。

『鮨 在』鮨職人とソムリエの、目利きと丁寧な仕事の“ペアリング”が話題の店。


『鮨 在』鮨職人とソムリエの、目利きと丁寧な仕事の“ペアリング”が話題の店。
肉厚なバフンウニは北海道産のもの。海苔は自分で巻くスタイルだ。ウニの下には、丁寧にほぐされた毛ガニの黄身酢和えが敷いてあり、その幸せな重なりをパリッとした海苔が優しく包む。


『鮨 在』鮨職人とソムリエの、目利きと丁寧な仕事の“ペアリング”が話題の店。
「ネタが濃厚な味わいですし、海苔の香りもあるので合わせるお酒は純米酒よりも少しハーブのような香りのある、さっぱりとした大吟醸『黒龍 しずく』を」と保坂さん。


『鮨 在』鮨職人とソムリエの、目利きと丁寧な仕事の“ペアリング”が話題の店。  
この日のつまみは千葉県勝浦産の鰹の漬け。芽ネギや花穂紫蘇が口の中をさっぱりと落ち着かせてくれる。花の淡い香りもエレガント。


五味を整えるような、繊細なペアリング。

『鮨 在』鮨職人とソムリエの、目利きと丁寧な仕事の“ペアリング”が話題の店。
イカの握りは食べやすさや見た目の美しさを考えて、氷の彫刻のような緻密な切り込みを。「筒イカ系はどうしても表面の皮がかたいので、切り込みを入れないとおいしく食べられないんです」と大将。


「ねっとりとしてやわらかな口当たりのイカに、大将による塩と柑橘の味つけ。それらを受け止めてペアリングを考えると、甘さや食感の柔らかさを持続させてくれる日本酒が合うんです。甲殻類はアミノ酸が多く、合わせる酒の種類によっては苦みを感じさせてしまいます。たとえば、タンニンを含むワインだとどうしても苦みを引き出すことに。ここはワインではなく、酸味が極力ない日本酒を合わせてあげると、すっきりと口の中が調います」と保坂さん。

『鮨 在』鮨職人とソムリエの、目利きと丁寧な仕事の“ペアリング”が話題の店。
ペアリングしたのは、錫の酒器に注いだ京都の酒造「澤屋まつもと」のKocon。


リラックスしながら鮨と酒のペアリングを楽しみ、新しい驚きと発見に出合える「鮨 在」。「鮨とつまみとのペアリングを楽しんでもらっている間、カウンターで酒好きのお客様同士、会話が盛り上がる、なんて光景もよく見かけます。そして、鮨を味わうだけではなく、酒の合わせ方や飲み方を学んでいかれる方もいらっしゃいます」と大将が語るように、「鮨好きでワイン好き」という欲張りな美食家を誘って、ぜひ忘れられない体験をしてみてほしい。

『鮨 在』鮨職人とソムリエの、目利きと丁寧な仕事の“ペアリング”が話題の店。
見た目の美しさにも目を奪われる千葉県勝浦産の鮪は、身の柔らかさや脂のバランスが絶妙で口内に時間をかけてそっと優しく溶けていく。ペアリングはメルシャンや勝沼醸造で長年ワイン造りに携わってきた人が開いたワイナリー「98WINEs」のすっきりとした辛口のロゼワイン。ネタとワインの色彩のグラデーションにも心ときめく。


ショップ情報

鮨 在
東京都渋谷区広尾5-3-13 バルビゾン86-5F
☏03-3446-1134
営業時間
Lunch: 12:00〜14:00(火〜土)
*おまかせコース12,000円(ペアリング+6,000円/ティーペアリング+3,000円)
Dinner :個室(第一部)17:30~、(第二部)20:00〜/メインカウンター(第一部)18:00~、(第二部)20:30~
*おまかせコース20,000円(ペアリング+10,000円/ティーペアリング+5,000円)
*個室の場合は子どもも入店可
休 日曜を中心に月8日
予約は営業日に電話にて受付

撮影/吉次史成 構成・文/矢島聖佳

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