投資,フードテック
(画像=aamulya/stock.adobe.com)

現在から将来に向けて世界規模の食糧危機が危ぶまれる一方で、多くの国々が健康ブームなどの飽食の時代を迎えています。それだけ食に関するビジネスは多種多様であるため、今後ますます巨大な市場になると言えるでしょう。最新のテクノロジーの進化は、食に関するビジネスに「フードテック」という新たな可能性を登場させました。今回はビル・ゲイツやレオナルド・ディカプリオなどの著名人も投資するフードテックビジネスについて、詳しく解説します。

世界的に注目されるフードテックとは

フードテックとは、食に関わるビジネスに、最新のテクノロジーを取り入れることを指します。食に関わるビジネスは、農業、漁業、食品製造業、外食産業など、さまざまな業種にまたがっていますので、提案されているフードテックの商品やサービスも多種多様です。

フードテックが注目される最も大きい理由は、現在から将来にかけて予測される世界規模での人口の大幅な増加です。日本国内では、少子高齢化による人口減少が叫ばれているので見落としがちですが、世界の一部の国と地域では、凄まじいスピードで人口が増加しています。

国連の世界人口推計2019年版によれば、世界の人口は77億人から、十数年後に約85億人に膨れ上がり、2050年には100億人に達すると予測されています。爆発的な人口増加は世界の中の一部の国において起こっていくことも大きな特徴です。一方で日本のように人口が減少していく国もあるのです。

フードテックが解決するテーマは、人口増加による食糧危機や飢餓の問題をベースとして、食物に対するニーズの多様化や、食物の安全性、食物を育む人材不足に対する省力化など多岐にわたります。ここでは、そのうちの主要な5つのテーマについて解説しましょう。

フードテック主要テーマ1:食糧危機

食糧危機は、フードテックが解決するテーマの中ではもっとも大きいものになるでしょう。人類が食物を育む方法として、すぐに頭に浮かぶのは農業、漁業、畜産業ではないでしょうか。

農業と漁業については、年を追うごとに深刻化する環境問題や異常気象によって、農作物や水産資源の獲得量が減っています。そんな状況を打開するために、フードテックが活用されています。

農業では、ドローンとIoTなどのテクノロジーを活用した耕作地管理や、無人農園などのビジネスがスタートしています。漁業では、漁獲量減少を踏まえた養殖産業において、IoTを活用したフードテックがスタートしています。世界中で海に面した土地は非常に多く、養殖産業に活用できる場所的な資源は膨大といわれています。水産養殖は、人口増加によって畜産業では補えきれないタンパク質の需要を満たす解決策としても注目されています。

フードテック主要テーマ2:飢餓

国連の発表では、現在世界では8億7,000万人が十分な食料を取ることができない状況にあります。一方で、日本や欧米の先進国では、たくさんの食物が廃棄されています。このフードロスの問題を解決するために、特殊冷凍テクノロジーなどの、フードテックが注目を集めています。

フードテック主要テーマ3:ニーズの多様化

フードテックが解決するテーマは食糧危機や飢餓だけではありません。現代の多様化する食に対するニーズは、さまざまなフードテック食品を誕生させています。たとえば、菜食者(ベジタリアン)向けの豆類で作った代用ミートや、健康志向を重視した完全栄養食などが挙げられます。

フードテック主要テーマ4:安全性

食物の多くが時間とともに劣化し、食べることで健康上の問題を起こすケースがあります。テクノロジーを使って食品の劣化を測定するツールや、食品を長く安全に保存するための素材など、食品の安全性をテーマにしたフードテック製品も数多く登場しています。

フードテック主要テーマ5:省力化

農業、漁業をはじめ食品加工業、外食産業など、フードに関わるビジネスは、人手が必要な業界が多い傾向があります。本来人が行っていた業務の多くが、システムやロボットなどを活用したフードテックにより代行が可能となっています。

2050年には世界人口が100億人に達すると予測されており、それと比例してフードテック市場は大きさ・幅ともに拡大していくのです。

ビル・ゲイツ、レオナルド・ディカプリオが投資する巨大市場

フードテックは世界中で注目されています。フードテックをテーマにしたイベントが世界各国で開催され、米国のテクノロジー系ファンドやビル・ゲイツ、レオナルド・ディカプリオなどの著名人が、フードテックを提案するスタートアップ企業に投資しています。

ゲイツ氏とディカプリオ氏が出資するのは、次世代食品を扱うBeyond Meatというスタートアップ企業です。フードテックの取り組みの1つである食肉の代替をテーマに、カリフォルニアに本社を構え、大豆などを使った植物性タンパク質由来の代替肉を開発しています。

Beyond Meatの創業者であるイーサン・ブラウン氏は、起業につながる学生時代のエピソードを紹介しています。それは、太陽光発電などの自然エネルギーを増やそうと努力するかたわらで、ステーキを食べてしまったのでは結局環境問題は解決しないのではないかと疑問をもったことでした。というのも、人間由来とされる温室効果ガスの51%は畜産から放出されていることがわかったからです。

それなら、自然エネルギーを1%増やすより、肉の消費を1%減らした方が環境問題の解決につながると考えたそうです。でも、人間は食べなければ生存できません。そこで考案したのが代替肉だったわけです。人間の環境問題のスタートは食にあると考えて設立した会社がBeyond Meatです。データの裏づけを持ったアイデアの斬新さが、多くの人々の共感を呼びました。

農業・素材などフードテックの範囲は広い

フードテックによって解決が期待できるテーマは食糧危機、飢餓、食のニーズの多様化、安全性、省力化など幅広く、現在多くのビジネスが進行中です。ここではいくつかの事例を紹介していきましょう。

農業:省力化し、収穫を最大化する

農業では、従来、人の知識や経験をもとに、人力で行っていた過酷な農作業に、システムやロボット、IoTを活用するフードテックがすでに数多く実用化されています。

広大な土地を無人のトラクターが走る無人農園や、単なる自動化された水やりではなく、農場の育成をカメラが映し出し、土壌の状況、日当たり具合をセンサーなどで感知し、データをAIが分析して、作物に最適な肥料や水を自動で与えるフードテックが現実のものとなっています。

渋谷発のスタートアップ企業であるPLANTIOは、東京・恵比寿のオフィスビルに、シェア農園を設けました。センサーやAI(人工知能)を使って会員が共同管理する仕組みで、東急不動産など大手デベロッパーが出資しています。

従来の商業施設やオフィスビルなどの屋上にある植栽などを菜園化し、コミュニティの醸成を図ることでビジネスを生み出すのが狙いです。AIで収穫期を予想し、共同所有者が集まって収穫祭イベントを近隣の飲食店で開催するといった事業をイメージしています。

代替食品開発:ベジタリアン、ヴィーガンなど食の多様化に対応する

前述のBeyond Meatの取り組みで紹介したように、代替肉はフードテックが実用化した商品です。おもに、大豆やえんどう豆などの豆類を素材に作られます。食肉業界2位の伊藤ハムは2019年秋、植物肉事業を本格化。大豆を主原料とする大豆ミートのハンバーグ、唐揚げ、ソーセージなどをすでに販売しています。セブン‐イレブンも植物肉パティを挟んだ「ソイミートバーガー」を、テストマーケティングを兼ねて都内の一部店舗で扱いました。代用ミートは現代人の健康志向や、菜食主義などのニーズを満たす商品として注目されています。

3Dプリンター:オリジナリティとオーダーメイドな食の開発

3Dプリンターを使って、素材から自動的につくり出すクッキーやチョコ、和菓子が注目されています。アメリカ食品大手 Mondelez International傘下の英国の菓子・飲料メーカーであるCadburyは、チョコレート3Dプリンターを発表しています。3Dプリンターを使うことで、人間が作ったものと同じようなお菓子を立体的につくれるだけでなく、人間の手ではできなかった非常に細かいデザインのお菓子をつくることもできます。

さらに、3Dプリンターを使ったフードテックは、顧客1人ひとりの健康志向や嗜好ニーズに合わせたオーダーメイド化された食品づくりを可能にします。日本ではまだ目立った動きは出てきていませんが、今後注目されそうです。

アプリ:AIが自分の代わりに食事メニューを考え提案する

毎日の食事のメニューを考えるのは意外と悩むものです。そんな時に、自分の代わりにメニューを考えてくれる便利なフードテックアプリが登場しています。フードテックアプリは、一般的なメニューを考えるのではなく、インターネットから取得したスーパーでのお買い得情報や、ユーザーがよく見るレシピサイトのメニュー情報などを人工知能(AI)が分析し、ユーザー好みのメニューとして提案します。

味の素のレシピサイト「AJINOMOTO PARK」では、AIを活用した自動献立提案システムを導入し、利用者一人ひとりのニーズに合ったメニューを提供しています。

無限に広がるビジネスチャンス

ここまで見てきたように、フードテックは食糧危機を背景にしているため、その市場ポテンシャルは無限に広がっているといえます。このビジネスチャンスをつかむために必要なことは、世界市場を俯瞰的に見渡しながら、ユーザーのニーズがどこにあるかを発見し、ニーズに沿った最適な提案をしていくことです。

食に関わるため、品質の確保は重要なポイントです。さらに、チャンスを逃さないためには、スピーディーにビジネスを実現することを第一に考え、テクノロジーや、人口増の食糧問題への影響など世界情勢への理解を心掛けることが必要となるでしょう。また、投資の視点でも要注目です。大和証券は2020年2月に「フード・イノベーション厳選株式ファンド」を設定しています。まずは市場の動向を見極めたいという場合は、こうした投資信託を確認し、場合によっては購入するのも一手かもしれません。

文・J PRIME編集部

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