VR,バーチャル旅行
(画像=rh2010/stock.adobe.com)

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックの影響で、私たちは旅行を楽しむことができなくなっています。2020年5月現在、不要不急の渡航の自粛が強く求められ、国内の移動も自粛要請されているだけに、国内、海外を問わず事実上どこへも行くことができません。このような状況であって、どうしても旅行に行きたいというニーズに応えてくれるのが、インターネットを経由する「バーチャル旅行」です。この新しい旅行のスタイルを紹介します。

旅行の領域にも応用されるようになったVR技術

バーチャルサービスを語る上で欠かせないのがVR(Virtual Reality、仮想現実)と呼ばれる技術です。VR技術の誕生自体は1968年という説もある古いものですが、本格的に普及し始めたのは2016年と言われ、ゲームなどの領域で積極的に利用されるようになりました。この技術は旅行の領域でも利用されて始めており、VR旅行のあまりの臨場感から、往復何時間もかかる海外旅行の必要性が議論になるほどでした。

たとえば、世界初のバーチャル空港として知られる「池袋国際空港(FIRST AIRLINES)」は東京・池袋にて模擬フライト体験とバーチャル観光を楽しめるサービスを提供しています。サービスでは、エアバスA310、A340の機体で実際にファーストクラスとして利用されていた最高級の座席に座り、実際に旅をしているかのようにゆったりとくつろげます。

ファーストクラスの元クルーの監修の下、キャビンアテンダントを目指す将来のクルーが「空の旅」にアテンドします。機内食も提供され、アナウンスやデモ、機内販売といった空の上でのおなじみのサービスが受けられるという徹底ぶりです。

模擬フライトの目的地は日本一周、アメリカ、フィンランド、フランス、イタリア、ニュージーランドで、利用料金は4,980円から。街並みの何気ない音なども聞こえてくるなど、演出も魅力的です。

航空会社もバーチャル旅行に参入しており、全日本空輸(ANA)は「ANA VIRTUAL TRIP」を、日本航空(JAL)は「JAL xR Traveler」というサービスをそれぞれ発表しています。

ANA VIRTUAL TRIPは旅行に行けなかった人も実際に渡航した旅行者と一緒に自宅で旅をバーチャルに楽しめるサービスです。現地にいる家族が専用のスマートフォンを、旅行に行けなかった人は専用ゴーグルを装着することで、現地に渡航した家族の旅行の映像がVR動画にてシェアされ、旅行に行けなかった人も疑似的に「同行」できるしくみとなっています。

JAL xR Travelerは、VR、AR(拡張現実)、 MR(複合現実)を使って、旅を「試着」するというサービスです。利用者はハンドデバイスと送風機を備えた専用のランニングマシーンにヘッドマウントデバイスをセットして乗り込み、VR映像を楽しみながら、旅行を体感することができます。視覚や聴覚だけでなく、現地のにおいを再現することで嗅覚から、また送風装置や歩行器などを活用することで触覚も刺激しながら、ナビゲーターが美しい場所を紹介したり、現地の空気感を伝えてくれます。

しかしながら、これらのバーチャル旅行サービスは、いずれも結局のところ外出を伴います。ANAのバーチャル旅行サービスは、VR同行者は外出しないものの、実際の旅行者がいないと成立しません。JALのサービスも、現状は展示会など特定の場での利用にとどまっており、将来的にも、誰もが自宅にいながら購入できるサービスを想定しているわけではありません。

ほぼ完全に行動を制限されている状況下では、実際の利用は難しいと言わざるを得ません。

自宅でバーチャル旅行を楽しめる時代に

では、完全に自宅にいる状態で完結するバーチャル旅行サービスはないものでしょうか。

ここで、すでにあったサービスながら見直してみたいのが「Google Map」の存在です。Google Mapのストリートビュー(Google Earthにもあります)機能を使えば、ほぼ世界中の風景や街並みをピンポイントで閲覧し、歩きながらあたかも旅行しているような気分になれます。

また、世界的なVR普及に対応して、2016年11月にGoogleはVRを採り入れたサービス「Google Earth VR」を開始しています。このサービスの最大の特徴は無料でかつ、自宅で楽しめることです。パソコンやスマートフォンに対応し、VRヘッドセットやVRゴーグルを装着するだけで、世界中を滑空するようにしてバーチャル旅行を楽しめます。従来のストリートビューをはるかに超えるリアリティを備えているのです。

池袋国際空港のように模擬フライトこそ体験はできないものの、このGoogle Earth VRでは世界1周にとどまらず、なんと宇宙空間から地球を俯瞰するという体験もできるようになっています。

このほかVR動画配信サービス「360Channel」では、テーマごとにさまざまなVR動画を配信しています。「ANA機体工場見学」では、ANAの航空機を下から見上げ、エンジンの役割などメカニックの仕事などをVRならではのビジュアルな解説で、360度にわたって楽しめるようになっています。

パンデミックにより外出が制限されていることから、VRを使ったバーチャル旅行に注目が集まっています。地球上のどこへでもバーチャル旅行ができるだけでなく、宇宙空間も体験できてしまうことに、その真骨頂が表れています。その楽しさから、パンデミック後には旅行の代替手段という枠組みを超えて、新たな市場を創出することも期待できそうです。各サービスをあらためて確認し、次のビジネスの可能性について考えてみてはいかがでしょうか。

文・J PRIME編集部

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