PARFUM SATORI

日本人調香師の大沢さとり氏が手がけるフレグランスブランド「PARFUM SATORI(パルファンサトリ)」。2019年、世界の香水愛好家のバイブル「PERFUMES THE GUIDE」に日本の独立系ブランドとして初掲載され、いま国境を越えて多くの人々を魅了しています。このブランドの世界観に触れるべく大沢氏にインタビュー。調香師としてのルーツを語っていただきました。

華道教室の草花、武蔵野の自然……いつも香りが身近にあった子ども時代

PARFUM SATORI

私は幼いころから草花や自然を身近に感じて育ちました。母が華道教室を開いていたことから、生徒さんの残りの花材を活けて遊んだものです。いま思えば、おままごとではありましたが、植物の香りの記憶はしっかりと刻まれています。たとえば、瑞々しいチューリップの茎を、ハサミでちょきんと切ったときに青い香りが鼻をついたことなどが印象に残っています。

小学校は都心から1時間ほどかけて、武蔵野のほうに通っていました。自然がとても豊かで、野原や雑木林に囲まれた環境でした。通学途中にはポケット植物図鑑を片手に雑草や花を手に取り、道草をしたものです。ほっこりとした土のにおい、季節の花々の香りとともに育った子ども時代でした。

成長するにつれ、ごく自然にガーデニングに親しむようになりました。そしてハーブにも出会い、育てるようになったことから、アロマテラピーに興味を持ちました。

当時は、アロマテラピーが日本に入ってきて間もないころで、書籍を通して独学で研究していました。さらに、天然の香料だけでなく、さまざまな香りに惹かれるようになり、自然と調香の世界を志すことになりました。

こうして振り返ってみると、いつも香りの道を歩んできたことが、調香師の道へと続いたような気がします。

日本人の精神性に合う、やさしく包み込むような香りを

PARFUM SATORI

調香の学校へ入学してからは、スイスの香料メーカーから帰国したパフューマーの先生に影響を受けました。プロフェッショナルになるための教えを受けたことで、調香師という職業を意識するようになりました。

もともと香水はヨーロッパで発展したことから、現地の気候や人々の特質に合わせて作られてきました。それを日本にそのまま輸入して販売していたのが、これまでのスタイルです。しかし、日本はヨーロッパとは異なります。気候も湿度が高いですし、人柄も控えめな性格であり、主張が強い匂いは好まれないなど、日本ならではの特質があります。

あまり自分を突出させることが好まれない日本の文化では、拡散性の強いものより、やさしく包み込むような香りがふさわしいはず。そうした日本人の感性を満たす香水をご用意したいと思いました。

そこで、自分自身のブランドを立ち上げるときには、日本人のメンタリティやライフスタイルに合う香水を考え抜きました。私が大切にしたのは「繊細」「調和」です。そう聞くと「目立たない無難な香り」を連想されるかもしれませんが、そうではありません。

周囲との調和に配慮し「全体の中で自分が美しい」香り

PARFUM SATORI

たとえば、茶道は日本の習慣や衣食住、文学や工芸品などあらゆるものに影響を及ぼしました。また、華道に見られる自然の景色を取り入れた活け方からくみ取れる感性も、日本で育った私たちにとっては特別なことではなく、日常に溶け込んでいます。

なかでも、「全体の中の調和」を見ることが美しさに通じるということは、茶道や華道から学びました。床の間に置かれる花は、部屋の調度に合うものでなくてはなりません。私は調香にも同じ配慮が必要だと思っています。花をメインテーマとしても、それを引き立てるトップノートや支えるラストノートたちが過不足なく組み合わされ、花や風景と情緒をそっくり表現した香水を作りたいと思いました。

結果として香水のテーマやプロット、ストーリーの世界観は、茶道、植物や華道、お香などに由来するものが多くなりました。たとえば、桜、夜の梅、ヒョウゲ、わさんぼん、ハナヒラク、苔清水など、日本語の名前の香水が多いことにも影響が表れているのではと思います。

また、香りをまとう人だけではなく、周囲との調和も考え、全体の中で自分が美しいことが大切だと考えています。季節や行事を楽しむという心や、調和に根差した繊細な匂い立ちで「もの静かで存在感のある香り」を表現することを大切にしました。こうしたコンセプトのフレグランスブランドはこれまでなかったため、日本でも海外でも新鮮に感じられ、評価されてきたのだと思います。

語り:大沢さとり(PARFUM SATORIオーナーパフューマ―)

文・J PRIME編集部

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