
新型コロナウイルス(COVID-19)感染症は世界で猛威を奮っています。
しかし、その後感染者数は指数関数的に増加し、WHO(World Health Organization:世界保健機関)によれば現時点(2020年3月6日)では95000人以上になっており、79の国に広まっています。
このような状況を受けて、世界の株価は暴落しました。
季節性インフルエンザと比較すれば、新型コロナウイルスは大したことはなく、過剰反応だと捉えている人たちは少なくありませんが、実際に比較してみると実は新型コロナウイルスの方が危険であることがわかります。
暴落している株式市場を冷静になって観察するには、まずそのウイルスについて正しい情報を得ておく必要があります。
そこで、今回は新型コロナウイルスとその危険性および経済へ与える影響などについて筆者の専門的知識と経験をもとに解説します。
新型コロナウイルスはSARSほど危険ではないが季節性インフルエンザよりも危険
新型コロナウイルスの致死率は今のところ約3.4%である一方で、2002年に発生したSARS(severe acute respiratory syndrome:重症急性呼吸器症候群)は9.6%、2012年に発生したMERS(Middle East respiratory syndrome:中東呼吸器症候群)は34.4%であるため、新型コロナウイルスは今のところそれらの感染症よりは危険性が低いと言えるでしょう。
では、季節性インフルエンザと比較してみるとどうでしょうか?
よく比較してみると新型コロナウイルスは季節性インフルエンザよりも危険性が高いことがわかります。以下にその比較結果について説明します。
致死率は 新型コロナウイルスの方が高い
新型コロナウイルス感染症で亡くなった人はいまのところ世界で約3200人である一方で、インフルエンザの場合は毎年数万人以上の人が世界中で亡くなっています。
ただし、危険性を評価するには致死率で比較する必要があります。
WHOによれば、新型コロナウイルスの致死率は3.4%であるのに対してインフルエンザのそれは0.1%です。
その差は34倍です。ちなみに日本でのインフルエンザの致死率は0.001%です。
ただし、それらの数値には感染していても検査が行われていないケースなどは除外されていることに留意しておく必要があります。
新型コロナウイルスのワクチンはまだ利用可能な状態ではない
インフルエンザはワクチンがあり利用されていますが、新型コロナウイルスのワクチンはまだ製造中です。
この点については、新型コロナウイルス感染をコントロールできていません。ワクチンがいつ頃できるのかについては後述します。
感染力についてはインフルエンザの方が強い
WHOは、毎年世界で数千万人以上の人がインフルエンザに感染していることなどを根拠に、新型コロナウイルスの感染力の方が弱いと評価しています。
つまり、新型コロナウイルス感染者あるいは感染していると考えられる人達を適切に隔離すれば、感染拡大を防げることになります。
新型コロナウイルスのワクチンはいつ頃利用可能になるのか
様々な製薬企業や公的研究機関で新型コロナウイルスのワクチン製造を行っており、動物での実験を始めているケースもあります。
ワクチンが利用可能になるには、現段階では少なくとも1年半くらいかかると言われています。
なぜ時間がかかるのでしょうか?それは、ワクチンのスクリーニングや認可を得るなどのプロセスに加えて、以下の製造プロセスでデータを集める必要があるからです。
- 健康な人達に新しいワクチンを投与して副作用が出ないか確認
- 数百人の新型コロナウイルスの感染者に新しいワクチンを投与してどれくらい抗体が産生されるか確認
- 次に数千人の新型コロナウイルスの感染者に新しいワクチンを投与して同様の検査を実施
ただし、感染者の隔離や予防が適切に行われていれば、ワクチンができる前に収束する可能性があります。
新型コロナウイルスの検査結果を正しく評価するのは難しい
新型コロナウイルスの検査は基本的にPCRあるいはRT-PCRが使われています。
新型コロナウイルスは短いゲノムRNAとそれを被うタンパク質で構成されており、最も重要なのはRNAなので新型コロナウイルスのRNAを特定すれば感染しているかどうかを判断することができます。
しかし、基本的にRNAの濃度は低いので、PCR(polymerase chain reaction)を用いてそれを増幅する必要があります。
PCR反応においては、既に読まれている新型コロナウイルスのゲノムRNAの配列を元に特定の配列箇所が増幅されますが、結果を得るまでに通常数時間以上かかります。
ただし、増やしたいサンプル(今回の場合新型コロナウイルスのRNA)の濃度が一定以上なければ、増幅するのは非常に難しいのです。
したがって、重症患者においては新型コロナウイルスが大量増殖しているため、PCR検査によって重症患者を特定するのはそれほど難しくないでしょう。
しかし一方で、例えば症状が少し出ている患者からサンプルを得て検査を行っても、信頼できない結果を得られる可能性が高いです。
以上の理由から、新型コロナウイルスの検査は慎重に行われています。
新型コロナウイルス対策は改善されつつあるが、まだ合理性を欠く日本政府の対応
日本政府は、大型豪華客船ダイヤモンド・プリンセスでの新型コロナウイルス感染症への対応は酷いものでした。
現時点での日本政府の新型コロナウイルス対策における大きな方向性には、大きな問題はないようですが、まだ合理性を欠いています。
例えば、学校の(非強制的な)一斉臨時休校が行われましたが、子供あるいは若い人たちにおける新型コロナウイルス感染による致死率は高齢者のそれより非常に低くかつ企業や店なども同時に臨時休業しなければ意味がないので、その対策の効果は低いでしょう。
基本的には、日本政府はこのような緊急対応が非常に苦手です。
全体の経済はある時点で落ち着くとしても直接関連している業界は長期的に影響
世界の株式市場はしばらく乱高下が続いていますが、短期的にはある時点で冷静さを取り戻して落ち着いてくる可能性があります。
そうだとしても、新型コロナウイルス感染症の拡大は長期化する可能性があるので、直接関係している観光業や航空関係などは長期的に影響が出るでしょう。
他に気になるのが、東京オリンピックが中止になるかどうかです。
過去にも中止になった例があり、理由は第1次および第2次世界大戦の勃発でしたが、世界的に流行した感染症が原因で中止になった例はありません。
仮にオリンピックが中止になれば、日本経済への大打撃となり得ます。
そもそも日本経済の基盤は非常に弱くなっているので、試算されている以上の打撃となるかもしれません。
新型コロナウイルスに関するまとめ
新型コロナウイルスに関して、最新情報などを元に解説しました。
ちなみに、ウイルスは非常に小さいため、通常のマスクにおける穴を簡単にすり抜けてしまいます。
したがって、WHOが述べているようにマスクは新型コロナウイルスの予防策にはほとんど使えません。
使うべきは、新型コロナウイルスあるいはそれと疑われるウイルスに感染した人達で、これにより他者への感染を防ぐことができます。
石鹸などを使った手洗い、汚れた手で顔などを触らないこと、人混みを避けることが最も効果的な予防策です。以下に今回の内容をまとめました。
- 今のところ新型コロナウイルスはインフルエンザよりも危険性が高い。
- 適切に隔離などを行えば新型コロナウイルスを収束させることができるかもしれない。
- 新型コロナウイルスの検査結果には誤りが出やすい
- 新型コロナウイルスのワクチンが利用可能になるのは少なくとも1年半後。
- 新型コロナウイルス感染症の大流行による株価の乱高下は落ち着くかもしれないが、直接関連している業界については注意が必要。
文・The Motley Fool Japan編集部/The Motley Fool Japan
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