沼津,地元企業,街づくりプラン
(画像=Sean Pavone/Shutterstock.com)

静岡県の沼津といえば、漁港の街として有名ですが、温暖で箱根や伊豆半島、富士山の観光拠点として便利な立地であるため、保養地として栄えた時代もありました。かつては皇室の御用邸もあり「海のある軽井沢」とも称されていました。

現在、沼津は新たな姿へと変化を遂げています。2011年には、水族館を目玉にした複合施設「港八十三番地」がオープン。観光客だけでなく、地元の人からも喜ばれる街づくりを目指しています。そこには一地元企業の信念と取り組みがありました。いまや進化し続ける街となった沼津の再生プランをお伝えします。

かつての「海のある軽井沢」は、水産業衰退の危機に

沼津は伊豆半島の付け根に位置しており、駿河湾に面し、富士山を望む絶景や海の幸、温暖な気候に恵まれた街です。古くから漁業が営まれ、江戸時代には東海道の宿場町、沼津城の城下町として栄えました。明治以降は皇室が御用邸を構え、政財界の著名人が別荘を建てたことから、「海のある軽井沢」と呼ばれるようになります。沼津に縁がある文人も多く、若山牧水、太宰治、井上靖らが滞在、居住したことで知られています。

しかし近年は経済状況が悪化し、人口減少や少子高齢化、市街地の衰退が懸念されるようになりました。基幹産業の水産業も低迷、沼津港の魚の水揚げ量が減り、水産業人口の減少も続くなど課題に直面しています。そうした中、市の活性化を目指すさまざまな動きがみられます。

沼津港の100年企業、佐政水産の挑戦

なかでも中心的な役割を果たしているのが、沼津港で100年以上の歴史を持つ佐政水産です。「沼津のあしたをつくろう」というスローガンのもと、水産業を軸にさまざまな事業を展開しています。

佐政水産が新たな事業として2011年に開業した「港八十三番地」は、「駿河湾を味わう町」として、沼津港で水揚げされる新鮮な魚介類や静岡の食材、さらに浜焼や海鮮丼、寿司、ハンバーガーまで手軽に楽しめる観光飲食施設です。沼津港を訪れる人の多くが観光客だったことから、地元客にも「安くておいしい」と親しまれる場とすることを目指しています。

2019年には拡張され、イタリアンやカフェ、ライド型アトラクションもオープン。人が常に集まり、若者が働きたい場となって賑わいが数十年先も続くよう、多様な店舗をそろえました。

シーラカンスの冷凍展示が見られる世界唯一の水族館、誕生

港八十三番地にある「沼津港深海水族館」は、深海をテーマとした日本唯一の水族館です。伊豆や箱根の観光帰りに食事で立ち寄るだけの場所ではなく、沼津を目的に人が訪れる集客の目玉とされています。深海魚をメインとすることで、日本一深い駿河湾に面し、昔から深海魚漁が盛んな沼津をアピールしています。

同館はシーラカンスの冷凍展示が見られる世界唯一の水族館でもあります。現在、毎年約40万人が訪れ、深海魚を観る、食べることのできるスポットとして、観光客の増加に寄与しています。

佐政水産によると、開業以来、観光客も地元客も順調に増加しています。深海のブランド化で沼津の知名度も上がり、港八十三番地だけで約140人の雇用を創出したとのことです。沼津港は年間100万人だった観光客が160万人を超えました。同社は沼津が100年後も多くの人で賑わう街になるよう挑戦を続けるとしています。

波及効果で進化が加速する新しい沼津

2019年にオープンした「ららぽーと沼津」も、市内に消費を呼び、人口や雇用を増やすとともに、交流できるまちづくりの拠点として地域振興を促すことが期待されています。同施設に佐政水産が地元企業と連携して出店した体験型マルシェには、壁面に深海水族館とコラボした幅10メートルの巨大水槽が設置され、駿河湾の生物を見ながら食事を楽しめるようになっています。

こうしたことを背景に、沼津市では2019年に市内に移り住んだ転入者が、転出者を上回り、37年ぶりの転入超過となりました。

静岡県でも、「沼津港港湾振興ビジョン」が進められています。観光を軸とするこのビジョンに基づき、日本最大級の水門「びゅうお」や水産複合施設「沼津魚市場INO」が整備されました。

地元を愛する一企業の情熱と取り組みが、いまや沼津再生のうねりとなり始めています。その地域ならではの魅力を活かし活性化させたその手法は、地方再生の好例として示唆に富んでいます。沼津の今後の発展に注目です。

文・J PRIME編集部

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