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(画像=Wright Studio/Shutterstock.com)

なかなか病院に行けない理由の1つが「時間がない」というもの。診療時間が平日は9時から18時、土日も午前中のみであったりすると、なかなか行くタイミングが取れないという人も多いでしょう。この診療時間のマッチング問題をICTで解決するサービスが始まっています。

「病院に行く時間がない」に対応するオンライン診療

病院の診療時間が自分の都合となかなか合わないことから、病院から足が遠のくことはままあるものです。また病院に行ける時間は他の人も共通するためか、その待ち時間が長くなりがちなため、つい億劫に感じてしまいます。この患者と医療時間のマッチング問題、実は最近ではICTが解決し始めています。スマートフォンのアプリを使った「オンライン診療」やデジタル技術を用いた疾病の予防、診断、治療などの医療行為を支援もしくは実施する「デジタルセラピューティクス」(DTx)など、時間や場所に縛られない“身近な病院”が登場しているのです。

オンライン診療は、予約から診察、会計などを一括してオンラインで行います。診察にはビデオチャットを使い、会計にはクレジットカードを使用することで、オンライン完結型を実現しています。医療プラットフォーム事業などを手掛けるメドレー社の「CLINICS」や医療関連の事業を担うMICIN社の「curon」などのサービスがすでに提供されており、CLINICSでは日本全国1,000以上、curonでは1,600以上の施設がこのサービスを導入済みです。

このサービスのメリットは、病院に行かずに診察が受けられることだけではありません。予約することで、待ち時間を減らし、診察した内容はデータとして記録されるなど、日々の健康づくりにも役立てられます。ちなみに物理的な処理が必要となる薬の取り扱いについてですが、登録した住所にまで配送してくれるサービスを採用しています。

予防医療まで視野にいれたデジタルセラピューティクスに注目

一方、デジタルセラピューティクスは、疾病の予防までを視野にいれた、オンライン診療のさらに先を行く動きです。2019年には、7社のデジタル治療推進企業が「日本デジタルセラピューティクス推進研究会」を発足するなど、業界の動きも今まさに高まってきたところ。デジタル技術を用いて疾病の予防や診断、治療などの医療行為を支援したり実施したりするソフトウエアのことを指し、「デジタル治療」とも呼ばれています。現在の参加企業は、アイリス、アステラス製薬、サスメド、塩野義製薬、田辺三菱製薬、帝人ファーマ、デジタルガレージなどであり、大手企業とスタートアップが共同して活動を進めていく考えです。

デジタルセラピューティクスの先進事例とされるのが、医療スタートアップCureApp社が展開するニコチン依存症患者向けのアプリです。患者が「たばこを吸いたい」などとアプリに入力すれば、「ガムを噛みましょう」「部屋の掃除をしましょう」などと具体的な行動が提案され、禁煙の継続をサポートします。

病院側でも進む「スマートホスピタル」の動き

今まで病院とは自らが行くものでしたが、現在は診療の形が多様化し、オンラインを使うことで、時間や場所に制約されない受診が可能になってきつつあります。こうした動きに呼応するように、病院側も進化しています。名古屋大学医学部附属病院や順天堂大学医学部附属順天堂医院などでは、2019年から「スマートホスピタル」に着手しています。スマートホスピタルとは、ICTを活用して病院内のオペレーションを効率化したり、安全や安心な医療を提供したりする取り組みです。医療従事者の人手不足が叫ばれる中、看護業務を効率化したり、ロボットによる薬品、血液製剤、検体の搬送システムが稼働したりすることで、スタッフの働き方を改革し、より安全で安心な医療を目指しています。

歴史が長く、大手企業がひしめき合う医療分野は、長く風穴を開けることが難しいジャンルと言われてきました。しかし、オンライン化、デジタル化、IoT化の波は確実にこの分野にまで押し寄せてきています。デジタルの力で病院、診察を身近にし、心身ともに健康な生活を送りたいものです。

文・J PRIME編集部

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