文豪,ホテル,インスピレーション
(画像=PIXTA)

作家がホテルの一室にこもって作品を書き上げるのは、今も昔も変わらないシチュエーションでしょう。そんな文豪たちが数々の作品を生んだホテルが東京にはあります。また、多くの小説やエッセーに、時代を象徴する場としてホテルが登場します。そんな、文豪たちと深いつながりのある東京のホテルを紹介します。

文豪たちが「カンヅメ」に:山の上ホテル

神田駿河台にある山の上ホテルは、出版社の集まる神保町に近く、創業時から作家たちが「カンヅメ」になって執筆に励んだ「文化人のホテル」。川端康成、三島由紀夫、池波正太郎ら数多くの文豪が定宿としたことで知られています。かつて芥川賞の受賞者がここで受賞後の第一作を執筆すると売れるというジンクスも生まれました。ロビーは原稿を待つ編集者であふれかえっていたといいます。

三島由紀夫は、「東京の真中にかういう静かな宿があるとは思わなかった。設備も清潔を極め、サービスもまだ少し素人っぽい処が実にいい。ねがはくは、ここが有名になりすぎたり、はやりすぎたりしませんやうに」との言葉を残しています。

池波正太郎は滞在中に絵を複数描いており、その作品が館内に飾られています。食通の池波は、ホテルの飲食店にも頻繁に訪れました。名店「てんぷらと和食 山の上」がエッセーによく登場し、当時会員制だったバー「葡萄酒ぐら モンカーヴ」には、会員として名が刻まれたプレートが残されています。

ホテルは1954年に開業、建築家ヴォーリズの設計でアールデコ様式の建物が特徴的です。2019年には約40年ぶりに改装され、リニューアルオープンしました。創業当時のエッセンスやクラシカルな雰囲気を受け継ぎながら創出された新しい空間で、文豪の面影を感じながら過ごすことができそうです。

100年の歴史を持つ重要文化財 :東京ステーションホテル

東京駅丸の内駅舎の中にあり、100年以上の歴史を誇る名門の東京ステーションホテルも多くの文化人に愛されてきました。

鉄道好きでもあった随筆家の内田百閒はここを定宿とし、ホテル内のバーにも訪れていたようです。江戸川乱歩も常連で、「怪人二十面相」の中に、客室を舞台に名探偵明智小五郎と怪人が駆け引きをするシーンを描きました。

松本清張は客室から駅のプラットフォームを見ていた際に、小説「点と線」のトリックを思いついたとされています。川端康成は1ヵ月ほど滞在し、小説「女であること」を書き上げました。映画化されると、ロケに使われた客室に予約が殺到したとのことです。

ホテルは、東京駅開業の翌年1915年に誕生、国の重要文化財にも指定されています。2012年に約5年の保存、復元工事を経てリニューアルオープンしました。客室には、原稿用紙をモチーフにしたメモ用紙などが置かれており、同じものが「文豪セット」として販売されています。

いつの時代も

多様な人々が集い、日々さまざまなストーリーが生まれるホテルと、作家や文学との関わりは時を経ても変わらず、深く特別なものです。

ホテルマンの経歴を持つ森村誠一は、ホテルを題材にしたミステリーを多く書いています。映画化された「人間の証明」は、舞台になったとされるホテルニューオータニがロケ地にもなりました。村上春樹の作品にもたびたびホテルが登場します。「1Q84」では、ホテル・オークラが舞台の1つになったとされています。

東野圭吾は、愛用していたロイヤルパークホテルから多くの着想を得て「マスカレード・ホテル」を執筆しました。映画化され、館内でロケも行われています。芥川賞作家の吉田修一は、パークハイアット東京を若い頃から利用しており、開業25周年とともに、滞在時の体験からインスパイアされて書いた「アンジュと頭師王」の発刊記念イベントが開催されました。

たまには忙しい日常を離れ、文豪が愛したホテルで時間を過ごしてみるのも良いのではないでしょうか。思いがけないインスピレーションを受けるかもしれません。

文・J PRIME編集部

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