華やぎと繊細さをあわせ持ち、唯一無二の存在感を放つジュエリーブランド「NOBUKO ISHIKAWA(ノブコイシカワ)」。創業デザイナーの石川暢子氏の類いまれなデザインセンス、そして独特かつ精巧な技法は、いまなお工房に脈々と受け継がれています。

特集の第2回目は、ブランドの代表を務める石川佳柄氏、工房のマネージャー・住本 力氏にご登場いただき、石川暢子氏が追求したこだわりやプロフェッショナルとしての姿勢、そしてブランドを担う次世代のクラフトマンたちへと残したものについて語っていただきます。

妥協なきものづくり精神と原点となるデザイン画の美しさ――石川佳柄氏

「NOBUKO ISHIKAWA」代表取締役社長 石川佳柄氏
(画像=「NOBUKO ISHIKAWA」代表取締役社長 石川佳柄氏)

姉の石川暢子が工房を立ち上げたのは、彼女が26歳の頃です。いまから50年前のことになります。世界を見渡せば、ガレやドーム兄弟といったアーティストの工房はありました。しかし、日本においてジュエリーという分野が確立されていない中において、工房の存在はとても珍しいものでした。最初はものづくりが好きな仲間が1人、2人と集まり少人数からはじめましたが、現在は23人まで増えました。

姉は、デザイナーとしてだけではなく、職人としても妥協が一切ない人でした。彫金に欠かせない「ロウ付け」という技法も、何千個と手がけて初めて覚える技だと話していたほど。とにかく、完璧主義で努力を惜しみませんでした。クオリティの高さを追求する姿勢は、ひとえに「いい加減なものはお客様に失礼である」という信念に基づいていたように感じます。

もちろん手仕事ですので、どんなに技術を磨いても理想を100%実現させたパーフェクトなジュエリーにはなり得ません。しかし、より完璧に近く、かつお客様にどう納得してもらえるのかを常に念頭に置いていたと思います。

また、NOBUKO ISHIKAWA の真骨頂はデザイン画にあると言っても過言ではありません。生前、膨大な量のデザイン画を残していますが、すべて実物大かつフリーハンドで描いているところも特徴的です。デザイン画からは、日本の女性に合うジュエリーを模索する様子をうかがい知ることができます。時代を辿っていくと、普遍的なものの中に、新しさを生み出していこうとする姿勢を感じます。

デザイン画と比較しながら製作中のジュエリー
(画像=デザイン画と比較しながら製作中のジュエリー)

おそらく最初からジュエリーだけを学んでいたら、こうしたデザイン画を描こうという発想にはならなかっただろうと思います。観察力や繊細さといった芸術家としての感性が根底にあったからこそ、NOBUKO ISHIKAWA にしかないオンリーワンと呼べるジュエリーの世界を創造することができたのでしょう。

熟練の技と感性が叶える唯一無二のものづくり――住本力氏

現在工房には2名のデザイナーが在籍しており、石川が残したデザイン画をもとにしたジュエリーの踏襲、アレンジ、そしてまったく新しいジュエリーを生み出す、3つのラインでデザインを担っています。

そのデザインをもとにジュエリーを創る職人は、現在12名います。キャリア30年以上のベテランから若手まで、世代は幅広いですが、皆ものづくりが好きな者ばかりで、NOBUKO ISHIKAWA のジュエリーに魅了されて工房の門を叩いた職人ばかりです。この工房で特徴的なのは、デザイン画を預かったら、一人の職人がパーツから全部自分で創り、仕上げていくところです。分業制ではなく、ひとつのジュエリーの完成をすべて担うことで、技術や感覚、感性を高めながら仕事をしています。

ジュエリーを手掛ける工房のなかには「磨きに何年」のように、ひとつの作業を極めてから次の段階にステップアップするところもあります。一方、NOBUKO ISHIKAWA では経験問わず、さまざまな技法を同時に学びながら、実践重視で職人を育成しているところが特徴です。そのため、いかにパーツを速く作れるかというスピードよりも、任された一つひとつのジュエリーに真摯に向き合う姿勢を大切にしています。

また、日本には海外のようなマイスター制度(職業能力認定制度)がありませんが、現在NOBUKO ISHIKAWA で働いている職人は、全員「貴金属装身具製作技能士」の1級を保有しています。こちらは、実務経験が一定年数なければ取得できません。確かな技術を身につけた熟練の職人たちですが、人々に愛される作品を追求するべく、工房全体で常にミーティングを繰り返し、納得できるジュエリーを創作しています。

NOBUKO ISHIKAWAの特徴のひとつに「彫金」があります。例えば、「和彫(わぼり)」という彫金技法を取り入れているのですが、これは鏨(たがね)と呼ぶ小さな刃物で金属に細かい細工をしていくものです。これにより金属に表情がつき、ジュエリーに繊細な印象が生まれます。NOBUKO ISHIKAWAのジュエリーは、植物や花などのモチーフも多いですが、高度な彫金技術によってカーブやひねりといった多彩な立体表現を可能としています。

「NOBUKO ISHIKAWA」彫金中のクラフトマン
(画像=「NOBUKO ISHIKAWA」彫金中のクラフトマン)

NOBUKO ISHIKAWAのデザインは画一的ではないところに、その凄さがあると思います。もちろんデザインはすべての原点になりますが、一人ひとりの創り手の感性を生かす余地があるのです。「石川暢子のデザインを通して自分の表現を叶えられる」ところに、職人としてのやりがいがあります。

そして何より、お客様に長く愛していただけるジュエリーを手掛けられることに誇りを感じています。NOBUKO ISHIKAWAのジュエリーは、母から娘へ何世代にもわたり受け継いでいただけるだけの品質をご提供していると自負しております。時代を超えて家族の絆とともにあるジュエリーを、これからも創り続けていきたいと思っています。

(撮影:高橋明宏)

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