絵画のような独創性、技巧が散りばめられたディテールの繊細さ。2020年に50周年を迎えるジュエリーブランド「NOBUKO ISHIKAWA(ノブコイシカワ)」は、息をのむほど美しいデザインで人々をとりこにしてきました。ヨーロッパの宝飾文化と日本ならではの工芸、彫金技法を融合させオリジナリティのあふれるジュエリーを生み出しています。

その魅力の源泉をたどるべく今回はアトリエを訪問。全3回にわたりNOBUKO ISHIKAWAの世界を紐解きます。第1回目は創業デザイナーの石川暢子氏の妹であり現在ブランドの代表を務める石川佳柄氏に話をききました。

日本の風景と女性になじむジュエリーを目指して

NOBUKO ISHIKAWA代表取締役社長 石川佳柄氏
(画像=NOBUKO ISHIKAWA代表取締役社長 石川佳柄氏)

1960年、石川暢子(いしかわのぶこ)が東京芸術大学の工芸科に入学した当時は、日本にジュエリーという言葉すらない時代でした。石川がジュエリーを手掛けることになったのは、大学在学中のころ。アクセサリー会社を営んでいた同級生のお父様が、彫金を学んでいた石川に制作を依頼してくださったことがはじまりです。 

石川暢子氏が残した膨大な量のデザイン画の一部
(画像=石川暢子氏が残した膨大な量のデザイン画の一部)

その当時、日本で宝石はお金と同じような資産として扱われていたので気軽に身に着けるものではありませんでした。そこで「日本女性がさりげなく身を飾れるものを作れないか」と考えはじめた会社がたくさんありデザイン画の依頼が石川のもとに多く寄せられたのです。欧米は社交界の存在がありジュエリーを身に着けて行くところはたくさんあります。一方日本はそうしたシーンが乏しいわけです。

そこで日本の景色になじむデザインや素材を考えた末に日本の工芸品や日本列島で採れる素材に目を向けました。日本では古代より大地からは「勾玉(まがたま)」「琥珀(こはく)」「翡翠(ひすい)」、また海からは「真珠」「珊瑚(さんご)」などすばらしい素材に恵まれています。また他にも日本には黒っぽいカラスの濡れ羽色の独特な質感を醸し出す「赤胴(しゃくどう)」。

さらに深みのあるグレーが際立つ「四分一(しぶいち)」といった素材や「蒔絵(まきえ)」や「七宝(しっぽう)」などの伝統技法が残されています。ダイヤを採掘することはできませんが、こうした素材や伝統技法は世界に誇れるものばかりです。石川はこうした日本において古くから受け継がれたものをジュエリーに活かすことでヨーロッパの宝飾界と一線を画しながら東西の文化を融合させた唯一無二のデザインを確立させていきました。