ゲノム編集食品
(画像=279photo Studio/Shutterstock.com)

2019年10月1日より「ゲノム編集食品」の販売が解禁され、波紋を呼んでいます。「ゲノム」とは細胞内にある遺伝情報のことで、「ゲノム編集」とは特定の遺伝子の一部を切り取るなどして新たな特性を持たせる技術です。こういった工程で生まれた食品が「ゲノム編集食品」と呼ばれます。日本では肉厚なマダイや血圧を下げる成分を増やしたトマト、アレルギー物質が少ない卵などさまざまな種類の食品で研究がなされているのです。

遺伝子組み換え食品との違いは?

遺伝子を操作すると聞いて「遺伝子組み換え食品」を思い浮かべた人も多いかもしれません。「ゲノム編集食品」と「遺伝子組み換え食品」この2つの違いはなんでしょうか。

例えば遺伝子組み換えによって害虫に強いトウモロコシを作る場合、害虫を駆除するタンパク質を作るバクテリアの遺伝子を組み込みます。一方「ゲノム編集食品」では、サバの養殖を例に挙げると稚魚同士で共食いをしないようにサバが本来持っている攻撃性の遺伝子の一部を切り取ります。

つまり「遺伝子組み換え食品」では遺伝子を“入れる”のに対し「ゲノム編集食品」では遺伝子を“切る”ということが大きく異なる点です。品種改良そのものは昔から行われています。

「おいしい」「収穫量が多い」といった特徴のほかにも、病気に強い品種の交配を続けたり放射線や化学物質を用いたりして遺伝子を変異させていました。遺伝子組み換えには膨大な時間がかかる一方、期待通りに結果が出るとは限らない点が大きなデメリットだったのです。しかしゲノム編集であれば狙いを定めた遺伝子だけを書き換えることが可能なため、精度が格段に上がります。

科学的に区別ができない

自然界においても放射線などの影響で遺伝子の一部が壊れ、新たな品種が生まれる突然変異は起こりえることです。さらに、遺伝子を切る「ゲノム編集食品」の場合、ほかの生物由来の遺伝子が含まれるわけではありません。そのため「ゲノム編集なのか」「従来の品種改良なのか」を科学的に区別することは事実上不可能と考えられます。

そういった理由から、厚生労働省は「ゲノム編集食品」を「科学的に従来の品種改良と区別できず、安全面でも従来のリスクと変わらない」と判断。「遺伝子組み換え食品」は、人間に害を及ぼすことがないかどうか厳正なる審査を受けることが義務づけられています。一方「ゲノム編集食品」については、企業などにどの部分をゲノム編集したかなどの情報の届け出を求めているものの、義務化はしていません。さらには商品への表示も任意としています。

消費者の知る権利と選ぶ権利

人類は長い歴史の中で試行錯誤を繰り返しながら、より食用に適するよう農水産物の形態を変えてきました。水不足や温暖化など、農業環境が厳しさを増す中で食料生産をより効率的にする必要もますます生じていくことでしょう。「遺伝子組み換え食品」が2001年に登場してから約20年間がたちますが、今のところ特に重大な問題は発生していません。

効率良く質の良い食品を提供できる「ゲノム食品」は、一見いいこと尽くしのように感じますが、その安全についてはやはり不安がつきまとうのではないでしょうか。表示を任意にしている以上、企業の出方もさまざまになることが予想されます。「栄養価が高い」「アレルギーが出づらい」といったことなら積極的に表示するかもしれません。

しかし「収穫量がアップする」といった消費者側にアピールしづらい事柄しかない場合は、表示を避ける企業も出てくることでしょう。食品として未知の部分がある以上、思わぬリスクが生じた場合にすぐ対応できるよう「少なくともゲノム編集食品の登録を義務づけるようにすべき」という議論が出るのは当然のことです。

海外の動きを見ると米国でもゲノム編集食品の表示は義務づけられていませんが、欧州連合(EU)では欧州司法裁判所が「遺伝子組み換え食品と同様に規制すべき」と判断しています。消費者の知る権利と選ぶ権利が守られるよう、日本での今後の動きを注視していく必要がありそうです。

文・J PRIME編集部

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