シュルレアリスム,シュール
(画像=Vladimir Wrangel/Shutterstock.com)

「シュール」という言葉を耳にしたことがある人は多いでしょう。あなたはどのような意味で使っていますか?日本人はこのシュールを「現実離れした」や「奇妙な」といった意味で使うことがあるようです。もともとシュールという言葉はフランス語の「シュルレアリスム」という言葉の略語として生まれました。

シュルレアリスムも現実離れしたといった意味合いを持つのかというと実はそうではありません。シュルレアリスムは日本語で「超現実主義」と訳されるように、「現実を超えた現実」「ものすごい現実」を意味します。

技法は後付けだったシュルレアリスム絵画

シュルレアリスムは、フランスの詩人であり文学者のアンドレ・ブルトンが提唱した20世紀の芸術界を代表する思想活動です。フロイトの精神分析学の影響を受けて無意識の世界を探究し、現実の奥に隠された「現実を超える現実」という新たなリアリティを追い求める運動です。思想活動が始まりでしたが、やがてブルトンは絵画でこそシュルレアリスムの世界を表現できると考えました。

そして『シュルレアリスムと絵画』という文章を発表しました。しかしブルトンは「シュルレアリスム絵画とは何か」といった具体的な手法を定義せずに独自の観点からこの時代の作家を「シュルレアリスム的」な存在として取り上げました。つまり勝手にシュルレアリスム絵画の作家として取り上げてしまったことになります。

シュルレアリスム絵画には、決まった形や手法が存在しない状況でエルンストやダリ、タンギーなど当時の多くの画家たちはそれぞれ独自の手法でシュルレアリスムの絵画を探求していったのです。

日本独自のシュルレアリスム

『シュルレアリスムと絵画』は、1930年に瀧口修造氏によって日本語に翻訳されました。シュルレアリスムは「超現実主義」と訳され、最新の前衛美術の形としてセンセーショナルを巻き起こしました。こうした広がりの中で日本におけるシュルレアリスムは、次第に「シュール」という独自の感覚を持つようになったのです。

なぜなら日本の画家たちの多くはシュルレアリスムのシュル(sur)を「超脱する」という意味で理解したからです。「現実を超えた現実とは異なる現実離れした幻想的な世界を描くもの」として受け入れました。すなわち今日のシュールという言葉の意味もここがルーツとなったのです。

日本の画家が初めて獲得した自由

2019年12月15日~2020年4月15日まで神奈川県の箱根町にあるポーラ美術館で展覧会「シュルレアリスムと絵画―ダリ、エルンストと日本の『シュール』」が開催されています。シュルレアリスム運動からどのようにシュルレアリスム絵画が生まれたのか、さらに日本における超現実主義への展開に焦点を当てた展覧会です。

定義のない状態でスタートしたシュルレアリスム絵画。画家たちが独自のやり方で実験を繰り返す中で生まれた技法を、マックス・エルンストとサルバドール・ダリの対照的な絵画を取り上げながら紹介しています。その独自の技法を目にすることで画家の探求心を知り、シュルレアリスム絵画の奥深さを感じることができるでしょう。

日本独自のシュールの世界としては古賀春江や三岸好太郎、瑛九、吉原治良などの作品が代表的です。それらが原点となって広がりを見せたと考えられる映像インスタレーションや特撮映画、漫画など、現代日本芸術文化の発展に貢献したさまざまな表現が作品と共に紹介されているのが特徴です。

会場では、これもシュールに属するのかと感じてしまう成田亨(なりたとおる)によるウルトラマン原画が展示されています。そこには、ウルトラマンとシュルレアリスムとの意外な関係性があるのです。また現代美術家であり、手描きのアニメーションを使った映像インスタレーションで知られる作家、束芋(たばいも)の作品ではシュルレアリスムの実験的技法をほうふつとさせる多様なアプローチが見てとれます。

このように日本におけるシュルレアリスム絵画は、シュールという日本独自の解釈のもと、日本の文化と混ざり合い発展を遂げてきました。20世紀最大の芸術運動であったシュルレアリスムは、今後日本においてどのような変化を遂げるのでしょうか。今回の展覧会をきっかけに、今後のシュールの動向に注目してみてはいかがでしょうか。

文・J PRIME編集部

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