ベネチア国際映画祭,アメコミ
(画像=rafapress/Shutterstock.com)

第76回ベネチア国際映画祭の金獅子賞は、アメリカンコミック(アメコミ)由来の「ジョーカー」に決定して幕を下ろしました。異例ともいえるアメコミ由来の作品の受賞は、一般の観客だけでなく、関係者を驚かせるのに十分なインパクトがあったようです。

アメコミ作品が受賞の快挙

世界三大映画祭の1つであり、長い歴史のあるベネチア国際映画祭で、ハリウッド大手スタジオによるアメコミ発の作品が最高賞となる金獅子賞を受賞しました。これは異例のことで、史上初の快挙です。特にベネチアの金獅子賞はこれまで、作家性や芸術性の高い作品を重視する特徴があるとされていました。

受賞したトッド・フィリップス監督作の「ジョーカー」は、アメコミのヒーロー「バットマン」の宿敵「ジョーカー」が誕生するまでのストーリーを、原作にはないオリジナルの脚本で描いたヒューマンドラマです。コメディアンを夢見る孤独で心優しい男が社会に見捨てられ、狂気に満ちた悪のカリスマへと変貌していく過程を俳優ホアキン・フェニックスが演じています。フェニックスは20キロ以上減量するなどして役作りに挑み、その演技が絶賛されました。

「ジョーカー」はベネチアで初上映され、観客や批評家から高く評価されましたが、審査員団がハリウッド賞を与えるのかどうかが注目されていました。

審査委員長のルクレシア・マルテル監督は、「敵は、個人ではなく社会であり体制だと主張する映画。ビジネスを重視する映画業界で、リスクを取ってこのような映画を作ったことは、米国のみならず世界全体にとって価値がある」と評しています。

審査員のパオロ・ヴィルツィ監督は、「コミック映画を超えた私たちの時代の肖像」とたたえました。映画祭ディレクターのアルバート・バルベーラ氏は、「今年もっとも驚くべき映画。アカデミー賞は確実」とコメントしています。アメコミ映画の枠を超え、社会性が強く打ち出された傑作として評価されたようです。

過去2年の金獅子賞作品「シェイプ・オブ・ウォーター」「ROMA/ローマ」は、いずれも翌年の米アカデミー賞で主要な賞を受賞しました。ベネチアは、アカデミー賞の前哨戦として注目される側面もあり、受賞作品が、後に続く北米での映画祭の賞レースの目玉となることにも期待が高まっています。

ジャンル多彩に

コンペティション部門に出品されたのは、作家性のあるものから文学を原作にした重厚なテーマのもの、サウジアラビアや中国の監督による作品まで、21本の多彩なラインアップです。前年に続き、動画配信サービスNetflixの作品も出品されています。

また、2018年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した是枝裕和監督が、名女優カトリーヌ・ドヌーヴやジュリエット・ビノシュらを主要キャストに迎えフランスで撮影した「真実」がオープニング作品として上映され、日本人監督作が初めて開幕を飾りました。

保守的なカンヌを横目に、多彩さが際立つベネチアの重要度が高まっているとの見方もあるようです。

話題を呼んだ受賞作

銀獅子賞(審査員大賞)を受賞した「アン・オフィサー・アンド・ア・スパイ」は、過去に性的暴行事件を起こしたロマン・ポランスキー監督の作品であることから、コンペティション部門に選ばれ、上映されることを疑問視する声もありました。マルテル審査委員長は、「アーティストと作品を切り離して考えない」と話しましたが、受賞に至ったことは議論を呼びました。

また、暴動が起こった1967年の香港を舞台にしたアニメーション映画「ナンバーセブン・チェリー・レーン」が脚本賞を受賞しています。ヨン・ファン監督は授賞式のスピーチで、現在の香港情勢について、「香港が正常に戻り、再び自由を感じられるようになってほしい」と訴え、大きな拍手を浴びました。

文・J PRIME編集部

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