えびす講,五穀豊穣
(画像=PIXTA)

「えびす講」をご存じでしょうか。七福神の一柱であるえびす様を祀る行事です。行われる日にちはさまざまですが、旧暦の10月20日に行われていたため、そのまま新暦に当てはめて10月20日、または旧暦とのずれを考慮して11月20日に行う地域、1月20日にする地域などが多いようです。

留守を守ってくれるえびす様

10月は「神無月」とも呼ばれ、全国の神様が出雲に集まります。他の神様が留守になる間、その土地を守ってくれる神様の代表格がえびす様なのです。そのため、「他の神様に置いていかれたえびす様をなぐさめよう」として始まったとも。該当の時期には、日本全国でさまざまなえびす講の関連行事が行われます。有名なものをいくつかご紹介しましょう。

東京の日本橋の宝田恵比寿神社とその周辺で長年開催されているのが、江戸中期の中ごろから続く「べったら市」。この名前の由来は「べったら漬け」。第15代将軍の徳川慶喜公が好んで食べていたとされ、宝田恵比寿神社の門前でよく売られていたことから、こう呼ばれるようになりました。

ちなみに、べったら漬けの名前は、麹と砂糖などの甘味料で漬けこむため、衣服にべったりとついてしまうことから、「べったりつくぞ〜、べったりつくぞ〜」と叫びながら縄に漬けた大根を振り回し、参詣客の着物につけてからかっていたことに由来するとか。毎年500を超える露店が出そろい、大いに盛り上がります。また、この宝田恵比寿神社で御朱印がもらえるのは、えびす講が行われる2日間だけです。

ひときわ盛大なのが、毎年11月23日に行われる「長野えびす講煙火大会」。長野市岩石町の西宮神社の御祭礼で、1899年に街の有志によって「長野市大煙火大会」と銘打って、朝から晩まで花火を打ち上げたのが始まりです。100年以上の歴史を持ち、選び抜かれた煙火師しか参加できなかったことから、全国の煙火師にとっての出世煙火となっています。

現在は毎年約1万発以上が打ち上げられており、2018年は約40万人が訪れました。晩秋の大規模花火大会は全国でも珍しく、長野という立地から寒さもひとしおですが、夏とはひと味違う澄んだ空気の中、美しい花火が夜空を彩ります。

関西で盛んなえびす講

しかし、えびす講が盛んなのは、どちらかというと関西です。関西では「十日えびす」といい、1月10日に行なわれることが多く、親しみをこめて「えびっさん」「えべっさん」などとも呼ばれます。中でも全国的に有名なのが、兵庫県の西宮神社で行われる「開門神事福男選び」。開門と同時に一斉に本殿に向かって走り抜け、一番乗りした人が「福男」として認定され、神様のご加護を受けるとされています。毎年マスコミでも大々的に取り上げられ、2019年は約5,000人が参加しました。

広島県の胡子神社で開催される11月のえびす講も大規模で、広島三大祭のひとつにも数えられています。毎年30万人近くの人でにぎわい、ここでは、「こまざらえ」と呼ばれる青竹で作った熊手が売られます。大判、大福帳、打ち出の小槌、宝船など「七宝」が下げられた熊手は、幸運と財産をかき集めるという縁起物。訪れた人の多くが買い求めます。

えびす様は「オールマイティ」な神様

えびす講では、熊手(または福笹)が縁起物であることと、似たような時期に開催されることから、「酉の市」と混同されることもありますが、まったく関係はありません。酉の市は大鳥神社の祭神である日本武尊が東夷征伐の戦勝祈願をし、帰還の時にお礼参りをしたことにちなんだもので、ご利益は武運長久(武人・武家としての運命の長久と繁栄を願う)と商売繁盛。一方、えびす様は、商売繁盛のほか、大漁祈願、五穀豊穣と、どんな職業の人にとってもたいへんありがたい「オールマイティ」な神様です。ご利益にあやかるべく、全国各地のえびす講に出向いてみてはいかがでしょうか。

文・J PRIME編集部

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