TSR,指標
(画像=ImYanis/Shutterstock.com)

2019年に入ってから投資の世界に新しい指標が登場しました。

金融庁や四季報といった、投資の専門家たちがこぞって注目し、取り上げるTSRですが、まだ認知度は低く、知らない方も珍しくはありません。

そこで今回は、TSRがどんな指標なのか、計算方法や注目される理由、そして株式を購入する際に参考になる指標についても解説します。

TSRとは

TSRとは、Total Shareholders Returnの略称です。

日本語に直訳すれば、株主総利回りを指します。

株主総利回りとは、購入した株式の値上がり益と配当を合計した数字になります。

たとえば、配当利回りが5%で、1年間の株価上昇率が10%の株式ならTSRは15%になります。

アメリカで注目されていた指標で、業績だけでなく株式の価値を含めた経営の成果として分析できます。

アメリカでは、このTSRの数値が取締役の報酬額を決める指標になっています。

日本では2019年に入ってから注目されるようになり、有価証券報告書で直近5年分を開示するように内閣府令が出されています。

また、投資家御用達の四季報ではTSRのランキングが掲載されました。

TSRの計算方法

TSRの計算方法は、

(1株あたりの配当額+株価の上昇額)÷当初株価×100=TSR(%)

になります。

たとえば、ソフトバンクの記事執筆時点での株価は1,510円で1株あたりの配当額は85円、1年前の株価は1,282円でした。

これらの数字を式に当てはめると、

{85+(1510-1282)}÷1282×100=24.4%

となります。

東証1部上場企業のTSRの平均値が約9%であることからすると、TSRが約24%のソフトバンクは非常に優良な株式だといえます。

一方で、株価を下げている株式の場合はどうなるのか計算してみましょう。

1株あたりの配当利回りが高い日産自動車ですが、記事執筆時点だと株価は711円、1株あたりの配当額は40円、1年前の株価は1,028円でした。

これらの数字を式に当てはめると、

{40+(711-1028)}÷1028×100=-26.9%

となります。

日産自動車は配当利回りが6%台を維持していたため、長期投資の高額配当株式として人気はありましたが、TSRの数字を見ると購入すべきではないという判断もできます。

なお、企業が公開する有価証券報告書に記載されているTSRは直近5年間分のTSRのため、計算式が「(直近年度末株価+5年間の配当額)÷6事業年度前の最終株価」となっています。

TSRに注目する理由

TSRがアップすれば株主も取締役も喜ぶ

TSRを簡単に説明すると、株主が一定期間にどれだけの利益を得られたのか、というパーセンテージになります。

上記のソフトバンクの場合、1年前に購入して保持し続けたら、1株あたり約24%もアップしたというのが分かります。

つまり、会社にとってTSRは一定期間でどれだけ株主に利益を与えられたのかという実績になります。

投資家目線だと、TSRの数値が高い企業は今後も同じだけの成長をすれば、同様の利益をもたらしてくれる可能性がある、魅力的な株式にうつります。

そうなれば、自然と人気が出て株価が上がっていきます。

アメリカではTSRの上昇率が一定以上になれば、取締役や役員の報酬をアップするという契約が一般的となっています。

TSRの上昇を成果の一つとして認識しているから、このような契約が結ばれます。

取締役や役員にすればTSRを上げれば報酬もアップするため、自然とTSRを意識した経営戦略を採るようになります。

言い換えると、TSRの数値を報酬と関連させている契約をした企業はTSRが上がりやすいと言えます。

日本ではその実例となる企業があります。

武田薬品の発表

アイルランドの製薬会社シャイアーを6.2兆円で買収した武田薬品は、株主総会で役員報酬のアップを提案しましたが、株主の反発を受けてしまいました。

すると、武田薬品の経営陣はTSRを取り入れた報酬基準を発表。

2019年7月31日に発表された新基準は大きな話題と注目を集め、2日間で株価が300円もアップしました。

このように、TSRを取り入れることは投資家にとっても経営陣にとっても好材料となり、株価を上げやすくする要因となります。

TSRの注意点

TSRは企業分析をする上で役立つ指標ですが、注意点もあります。

TSRは企業の過去の成果を分析した数字であり、これからの成長率を示唆する指標ではありません。

TSRがどれだけ高くても、同じだけの成果を翌年以降も続くと保証されていません。

TSRがどれだけ高くても、TSRだけを見て株式を購入しないようにしましょう。

株式を購入する際には複数の指標と共に分析するのが大事です。

TSR以外の指標

TSR以外に企業を分析する指標を紹介します。

どれも、株式を購入するかどうか役立つ指標となっています。

配当利回り

配当利回りは、株価に対して年間でもらえる配当金の割合を示す指標です。

長期投資を考えている方は、株価が上下するよりも、安定して配当金がもらえる株式を選びます。

銀行の金利が0.001%も当たり前の時代だと、配当利回りが2%でも銀行に同額を預けるよりもよっぽど魅力的な投資先になります。

ただし、配当利回りが高くても業績がよい企業とは断言できません。

配当利回りが高くなる理由として考えられるのが、配当金額が増えたか、株価が下がった時になります。

株価が下がってしまうのは業績が悪いと考えられるため、購入したら資産が目減りしてしまいます。

PER

PERとは、会社の利益と株価の関係を表す数値になります。

時価総額を純利益で割ると算出される数字で、購入した株の投資資金が何年で回収できるのかという目安になります。

たとえば、同じ株価の企業があったとして片方のPERが5倍、もう片方は10倍だとします。

PERの数字は投資資金が何年で回収できるのか表しているため、片方の企業は5年で、もう片方は10年で回収できるとなります。

つまり、同じ株価の企業でもPERが5倍の企業の方がお得だと言えます。

ただし、PERが低いからよい企業とは限りません。PERが上がる理由として考えられるのは、純利益が増えた場合です。

業績が好調で純利益が増えたのなら問題ありませんが、今後の業績が悪化しそうなのに備えて資産を売却して純利益が増えた可能性もあります。

どれだけPERが低くても、業績が悪化している企業の株式を購入するのは危険です。

PBR

PBRとは、企業の株価が企業の価値に対して割高なのか、割安なのかを見極める指標です。

現在の株価を1株あたりの純資産で割って算出できる数字で、1倍を上回っていれば適正価格に対して割高、1倍を下回っていれば適正価格に対して割安と判断できます。

どうして1倍以下が割安になるかというと、1倍以下の企業は現時点で企業の価値を正しく認められていない可能性があります。

時間を掛ければ、1倍に戻る、つまり株価が上昇する可能性があるという事になります。

ただし、PBRが1倍以下だからといって割安とは限りません。

PBRが1倍以下になる理由として、自己資本比率が低い企業があり得ます。

自己資本比率が低いと配当金が出せず、ちょっとした不景気でも倒産するリスクがあります。

また、市場経済が冷え込めばPBRは軒並み下がります。過去には、リーマンショックの時に日本の大企業でもPBRが1倍を割りました。

このようにPBRだけで株式を購入するかどうかを判断してはいけません。

まとめ

以上が、TSRの解説になります。

TSRは株式がどれだけ株主に利益を与えられたかの成果になります。

そのため、これからも同じだけの割合で利益を出すという保証はありません。

株式を購入するかどうか決めるときは、配当利回りやPER、PBRなど他の指標と比べながらきちんと考えましょう。

文・The Motley Fool Japan編集部/The Motley Fool Japan

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