米中,貿易戦争
(画像=rustamxakim/Shutterstock.com)

2018年から始まった米中貿易戦争は、始まってから1年以上が経過しても、落としどころが見えないまま拡大を続けています。

そこで今回は米中貿易戦争の終焉のタイミングを、米中貿易戦争の概要や与える影響を分析しながら解説をします。

米中貿易戦争の概要

アメリカと中国が互いの輸出品に関税をかける

米中貿易戦争のきっかけは2018年頃になります。安価で大量に生産される中国の鉄鋼製品は、トランプ政権にとって大きな問題として映っていました。

自国の鉄鋼製品を流通させたいトランプ大統領は、2018年3月に中国の鉄鋼製品に対して関税をかける大統領令を発令しました。

鉄鋼製品だけなら中国も様子を見たのかもしれませんが、その後もトランプ政権はロボットや半導体など合計して1400品目に対して関税をアップ。

合計で500億ドルに対して25%の関税をかける方針を8月までに固めました。

この方針に中国は一方的で理不尽な外交だと反発し、大豆や自動車など合計して800品目に対して関税をかけることを決定。

アメリカの政策に対する反撃として、合計500億ドルに対して同じ25%の関税を掛けました。

こうして、両国ともに互いの輸出・輸入品に対して関税をかけあう米中貿易戦争が幕を開けました。

関税の掛け合いという点を見ればトランプ政権側の言いがかりに近い政策がきっかけのように思いますが、トランプ政権側には関税をかける別の理由があります。

アメリカに追いつこうとしている中国

近年、中国の躍進は著しい物となっています。

経済以外にも軍事や化学技術などの面で大きな躍進をしており、アメリカを脅かす存在となりつつあります。

アメリカ国内には、中国の成長を脅威と感じる勢力がおり、対抗手段を取るべきだと声高に主張していました。

そういった層をまとめ上げて大統領になったのがトランプ氏です。

トランプ氏は中国の躍進を阻み、強いアメリカという立場を守る為に中国に対して圧力をかけているという背景もあります。

一時休戦からの戦争再開

2018年は米中貿易戦争の前半戦と呼べる関税の掛け合いとなりましたが、12月に行われたアルゼンチンでの首相会議によって、トランプ大統領と習近平国家主席同士の話し合いが設けられました。

直接対話を経て、両者は一時休戦に合意しました。

半年後におこなわれる予定の、日本でのG20までにきちんとした取り決めをしようと約束をしました。

ところが、2019年5月に行われた閣僚級会議で折り合いが付かず、トランプ大統領は中国への不満をツイッターに投稿してしまいます。

なんと、閣僚級会議で交渉中だった2000億ドル相当にかけていた関税を10%から25%に引き上げると決定しました。

中国も負けじと、600億ドル相当にかけていた関税を25%に引き上げるぞと報復措置を取り、米中貿易戦争が再び幕を開きました。

米中貿易戦争の現在

アメリカと中国の溝が深まる中、2019年6月に大阪でG20 サミットが開催されました。

注目を集めていたトランプ大統領と習近平国家主席は直接会談の場を設け、「建設的な議論ができた」とマスコミにコメントをしています。

この発表を受けて両国は再び一時休戦へと向かう流れとなり、次官級・閣僚級での会議が予定されています。

このように米中貿易戦争は激化と休戦を繰り返しつつ、状況を悪くしています。

米中貿易戦争がアメリカに与える影響

米中貿易戦争は報復と一時休戦を繰り返しながら泥沼へと突き進んでいる印象はありますが、実際の所、アメリカ社会に対する影響はそれほど高くありません。

というのも、アメリカは消費者が直接購入しない原材料や部品などに関税をかけていたため、一般人への影響が少なかったのです。

ところが、報復合戦が激しくなるにつれて、家電製品や衣服などの輸入品にも関税をかけるようになり、一般人に影響を与えるようになります。

それでも、アメリカ社会に対して影響力が少ないのは、米中貿易戦争の影響以外の部分でアメリカ経済が堅調だからです。

先日、アメリカのFRBは金利を10年ぶりに引き下げましたが、それまでは緩やかに上昇傾向にありました。

失業率も低く、個人消費も悪くないため、アメリカ国内の経済は良好と言えます。

アメリカは経済が好調だと大統領への支持率も下がりにくいため、トランプ政権の方針は変わらないと予想されます。

米中貿易戦争が中国に与える影響

中国は米中貿易戦争前後からGDPが目標としていた数字を維持できず、下降修正をしました。

加えて、アメリカに対して貿易で稼いでいたのが米中貿易戦争によって減少した為、国内の公共事業を増やすことでバランスを取ろうとしています。

とはいえ、中国の工場は輸出製品を数多く生産しているため、このまま米中貿易戦争が続けば経営維持できない可能性もあります。

以上のことから、中国はアメリカよりもダメージを受けているが、景気対策をしてどうにか平静を保っているといえます。

米中貿易戦争が日本に与える影響

日本の企業で、輸出をメインにして中国とアメリカと関係していない企業はほとんどありません。

そのため、米中貿易戦争が長引けば日本に与える影響も深刻化していきます。

たとえば、世界中で流通しているiPhoneは、メーカーはアメリカのAppleですが、製造工場は中国、部品は日本から輸入しています。

もし、アメリカがiPhoneに関税をかけると決定した場合、中国の工場で製造するメリットが減ってしまい製造台数が減少します。

製造台数が減少すれば、必要なる部品の数も減り、日本の輸出量が減ってしまいます。

このように、アメリカと中国が対立を続け消耗戦を繰り広げるのは、日本にとっても大変苦しい展開となります。

米中貿易戦争の終焉のタイミング

米中貿易戦争を紐解くと、根幹にある問題は2つあります。

1つは対中貿易におけるアメリカの赤字です。アメリカは中国との貿易で解消するために関税をかけ、報復合戦と発展しました。

しかし、このまま関税をかけ合えば収益が落ち込んで赤字が広がるだけだと両国とも理解しているため、度々休戦を挟んでいます。

もう1つの問題は、アメリカと中国の経済政策の違いです。アメリカは多数の企業が争う自由競争による経済政策を取っていますが、中国は国家主体となって経済を盛り立てようとしています。

そのため、情報や技術の収集を国が全面的にバックアップしているため、中国は急激に成長しました。

トランプ大統領は選挙や世論の動きを気にして経済政策を決定するという弱点がありますが、習近平国家主席は選挙や世論を気にせずに国家として行動できるという強みがあります。

長期戦となれば、国のトップから落とされる心配のない中国が有利だという見方もできます。

つまり、この米中貿易戦争は、経済がグローバル化していく中で、政治のグローバル化をした民主主義国(アメリカ)と、政治のグローバル化をしなかった非民主主義国家(中国)という、2つの陣営による対立へと発展しています。

そのため、米中貿易戦争を米中新冷戦と呼ぶこともあります。

この米中貿易戦争が終焉を迎えるタイミングは分かりません。

なにしろ、問題は単なる赤字解消だけでなく、共存できない主義がぶつかった結果でもあるからです。

今回の米中貿易戦争は、かつての冷戦と比較すれば前半戦といった所かもしれません。

アメリカと中国が互いに譲らずに関税をかけ合えば、自然と世界経済は中国向け・アメリカ向けの製品に分かれていきます。

同じ商品を別々の国に向けて作るのは非効率的なため、どちらか片方の国を主軸にした経済活動へと変化していくはずです。

そうなると、世界がアメリカ側か、中国側かどちらに着くのか決めるようになります。

かつての冷戦は東ヨーロッパの民主化運動によって、ベルリンの壁が崩壊し東ヨーロッパ社会主義が消滅したのを皮切りに終結へと向かいました。

アメリカが勝つにしろ、中国が勝にしろ、米中貿易戦争が集結するにはベルリンの壁が崩壊するのと同じぐらい歴史的な事件が必要になるかもしれません。

まとめ

以上が、米中貿易戦争の終焉のタイミングに関する解説になります。

終焉のタイミングが掴めないまま、米中貿易戦争が拡大していけば、日本もどちらのグループに参加するのか決めなければなりません。

米中間の貿易戦争だと他人事のようにとらえず、この新冷戦がどのように決着を迎えるのか注目する必要があります。

文・The Motley Fool Japan編集部/The Motley Fool Japan

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