贈与の2大選択肢である「暦年課税」と「相続時精算課税制度」。このうち、相続時精算課税は2,500万円のまとまった額を贈与できるにも関わらず、あまり利用されていないようです。その原因と利用メリットを探ります。

贈与には2つのグループ「用途限定型」と「用途自由型」がある

はじめに、贈与を進める際の全体イメージを整理します。贈与には、いくつかの選択肢があります。それらを大別すると、「用途限定型」と「用途自由型」の2つのグループに分けられます。用途限定型とは、贈与したお金の使い途を明確に指定したものです。例えば、次のようなものがあります。

主な用途限定型生前贈与の非課税枠(上限)

  • 教育資金などの贈与: 1,500万円
  • 結婚・出産・育児資金の贈与: 1,000万円
  • 住宅取得資金の贈与:3,000万円(省エネ等住宅の場合)

これに対して、用途自由型は、贈与されたお金は何に使ってもいいというものです。控除の規定や額によって次の2種があります。

  • 暦年課税:毎年110万円まで基礎控除可
  • 相続時精算課税:累積で2,500万円まで特別控除

この2つのグループ、用途限定型と用途自由型をいかに組み合わせるかが、相続対策成功の鍵を握ります。

2,500万円も贈与できるのに利用率2%……相続時精算課税とは?

2つのグループのうち、用途自由型については、それぞれの特徴を理解してご自身に合う方を選択することが大事です。前提としては、「暦年課税と相続時精算課税は併用できない」という原則があります。相続時精算課税を選択した年の分以降は、暦年課税へ変更できなくなります。

両者を比べると、内容が認知されていないのは相続時精算課税の方です。一定の金融資産を有した50~70代を対象にした 信託協会の調査 では、「相続時精算課税制度を知っていた」と答えたのは全体の23.6%、実際に利用しているのは2%にとどまっています。

では、どの部分が理解しにくいのでしょうか? まず控除額(=税金のかからない非課税額)は明快です。暦年課税が「毎年」110万円まで、相続時精算課税は「累計」2,500万円です。累計ですから、自由な回数で2,500万円を非課税で贈与できます。贈与する財産の種類は問いません。現金などだけでなく、不動産や株などにも使えます。

相続時精算課税は「節税効果がない」と言われる理由

内容が少々込み入ってくるのが、非課税額を超える部分の扱いです。暦年課税の場合は額によって10~55%で課税されます。これに対して、相続時精算課税は非課税額を超えた部分は一律20%で課税されます。

一見すると、一律20%で計算される相続時精算課税の方が節税で有利な印象です。ただし、相続時精算課税の場合は、相続発生後に受け継ぐ相続財産と、それまでに贈与された財産を合わせて、相続税が計算されるのです(支払い済みの贈与税は相続税から引かれます)。

これに対して、暦年課税で贈与された分は、相続が発生しても新たに課税されることはありません。贈与された時に課税は完了しているという考え方です。つまり、相続時精算課税では相続税の節税効果は期待できないということです。

ただし、短期間でまとまった財産を贈与したいケースでは「一律20%」で計算されるためメリットがあります。あるいは贈与時の価額で相続税が計算されるため、値上がりする可能性のある財産、収益を生む財産などの贈与には相続時精算課税が向いていると言われます。

暦年課税と違って贈与者・受贈者の年齢制限あり

その他の相続時精算課税のポイントとしては、次のような内容があります。

  • 贈与者の年齢が60 歳以上(父母または祖父母)であること
  • 受贈者の年齢が20歳以上であること
  • 選択した場合、110万円以下でも申告が必要

暦年課税と相続時精算課税のどちらを選択した方がよいかは、贈与期間、財産の額と種類などによります。暦年課税の方がメリット大と思い込まず、顧問税理士に相談するのが賢明です。後々「なんで相続時精算課税を選ばなかったのですか……」と言われても取り返しがつかない、相続対策の重要な局面です。

文・J PRIME編集部

【関連記事】