2018年の訪日外国人観光客が3,000万人を超え相変わらず上昇基調を維持する中で、去年8月にはあの爆買いのランドマーク「ラオックス銀座本店」がひっそりと店を閉じました。

家電や高級腕時計の買いあさりはすっかりなりを潜め、訪日外国人のトレンドは文化体験や食といった「コト消費」にシフトしました。

この記事では、中国人富裕層を中心とした訪日外国人の「食」トレンド、訪日外国人が飲食業界に与えるインパクト、「食」を取り込む企業の動きについて紹介します。

中国人に人気のグルメ旅行

訪日外国人の核となるのは今も変わらず中国人で、全体の4分の1を占め、伸び率も前年比13.9%と好調です。一方で、1人当たりの消費額は落ち込み始めており、2018年度に入って化粧品・医薬品の売上も頭打ち傾向です。

一時より買い物をしなくなった中国人に人気なのは、スキーや温泉さらにはパラグライダーといったディープ体験旅行と、もう1つが「グルメ旅行」です。

超高級すし店は中国人ご用達

銀座の数寄屋橋次郎といえば、安倍首相・オバマ前米大統領・ケネディ元米駐日大使らが夕食会をした場所としても知られる、非常に有名なお寿司屋さんです。

お値段はもちろんですが、老舗寿司店独特の格式張った雰囲気も手伝って、そうそう気軽に行ける店ではありません。「テレビで見て知ってるけど入ったことはない」方が大多数でしょう。

数年前ですが、そんな次郎でちょっとした事件が話題になりました。中国人留学生とその友人数名が同店を訪れた際、「寿司を焼いてくれ」と要求し、店側とトラブルになったのです。

その後お客側が詫びを入れて大事には至りませんでしたが、次郎はその頃から、中国人の間で評判の人気店なのです。

人気は3万円のコース料理

次郎に限りません。かに道楽・海鮮ひつまぶしの虎杖・うなぎの竹葉亭・鉄板焼きの鉄板神社など、中国人の食通は日本人以上に名店を知っています。

今、中国人の小金持ちクラスには「3万円のコース料理」が人気です。中国人からは、「日本の和食のミシュラン店は安くておいしい」との評価を受けています。上海にはミシュランがつく店はありませんが、それでも3万円以上は確実にかかります。クオリティの高さを考えれば、ミシュランの味が楽しめる3万円は割安なのです。

こうした中国人富裕層を取り込もうと、会員制コンシェルジュサービス(ラグジュアリージャパン等)や、予約困難な人気店にも対応した高級飲食店オンライン予約サービス(テーブルオール)も展開されています。

一方で、多様化する富裕層ニーズに対応する動きも始まっています。マリオットグループは岐阜・三重・愛知など5県で、「フェアフィールド」ホテルと道の駅がタイアップした「秘境の食」サービスをローンチします。

飲食店業界復活のカギを握るインバウンド

共働き世代の増加や外食化進行に伴い成長を続けてきた飲食業界も、30兆円近くに達した1997年を境に下降に転じ、それ以降は経済の長期低迷や少子高齢化の影響を受け25兆円を切る水準にまで落ち込みました。

それが最近は徐々に回復し、2017年度には25.6兆円まで盛り返しました。起爆剤はインバウンドによる飲食で、1人当たりの消費額は約3万円、金額では1兆円近くまで達しています。

高級店ばかりではありません。最近は、築地の立ち食い寿司といった地元の人たちが通うようなリーズナブルでおいしい店も人気になるなど、中国人富裕層の食は広がりを見せています。

これから先も国内での大きな需要が望めない中で、飲食業界復活のカギの1つが中国人をはじめとするインバウンドなのです。

一方で、気がかりな話も耳に入ってきます。中国人富裕層の間で日本の食への満足度が下がりつつあるというのです。高級店に行ったのに店員の態度が素っ気ない、直接予約しようとするとWEBを通せと電話を切られる、といった類の不満が多いようです。

今一度飲食業の正道に立ち返り、「この店ならでは」の味とサービスを極める時です。営業努力せずとも向こうからやってくる現状にあぐらをかいていると、手痛いしっぺ返しが待っているかもしれません。

文・J PRIME編集部

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