海底,リーフボール,自然保護葬
(画像=Chris Holman/Shutterstock.com)

自然保護葬の中でも樹木葬は広く知られるようになりましたが、別のユニークな方法として、自身の遺灰をサンゴ礁にするメモリアル・リーフという取り組みが行われています。運営しているのは、米フロリダにあるエターナル・リーフス社です。

近年、世界中のサンゴの死滅が危惧されています。消えゆくサンゴ礁の代わりに海洋生物のすみかをつくろうと、人工サンゴへの注目が集まっているのです。メモリアル・リーフは、遺灰を活用して人工サンゴをつくることで、環境保護に貢献できます。遺された家族が永続的に管理する納骨と異なり、管理も容易です。維持費もかからず、お墓参りも可能なことから人気を集めています。

「海の熱帯林」サンゴ礁が深刻な危機

サンゴ礁は、「海の熱帯雨林」といわれるほど、海洋生物にとっても人類にとっても不可欠な存在です。サンゴ礁の面積は地球表面の0.1%ほどしかありませんが、サンゴ礁には9万種もの生物がいるとされ、さまざまな海の生物にすみかと食べ物を提供する、生物多様性に富む生態系といえます。このように多くの生命を育むサンゴ礁が死んでしまうと、そこをすみかにする生物だけでなく、サンゴ礁にすむ生物を食べる生物も姿を消してしまい、生態系のバランスが崩れてしまいます。そして、わたしたち人間にとっては漁業資源、観光資源が失われてしまうことになるのです。

リーフボールをお墓に、埋葬の新しい提案

こうした状況に適応すべく、絶滅が危惧されるサンゴ礁の代わりに海洋生物にすみかを提供してくれる人工サンゴが、注目を集めています。環境にやさしいコンクリートで作られているこの人工サンゴは、すでに世界70ヵ国の海に70万個以上も沈められています。

環境NGOのリーフボール財団は、世界中の海洋生態系を再生するためにさまざまな活動をする本格的な環境団体です。人工サンゴである「リーフボール」の開発と設置、サンゴの人工繁殖の他にも、生態系が破壊された河口やマングローブの植林の再生などを、政府や企業、学校、研究団体と協力して行ってきました。

それがエターナル・リーフス社の前身でした。創業者ドン・ブロウリーさんは、義父の「遺灰を人工サンゴのコンクリートに混ぜてほしい」という遺言をきっかけに、人工サンゴのお墓「メモリアルリーフボール」と呼ぶ穴のあいたドーム型のコンクリートに遺灰を混ぜたものを作り、海に沈めました。これを機に、義父と同じ思いを抱く人がいるかもしれないと、エターナル・リーフス社を創業したのです。

場所はGPSで把握、遺族の管理の負担減へ

亡くなった後も環境保護に貢献できるとして、人工サンゴ墓を希望する人が増えていますが多くの人がこのメモリアル・リーフを選ぶのは、環境保護のためだけでなく、遺族に対する思いからでもあります。

遺族や子孫に維持と管理を任せることになる納骨と違い、メモリアル・リーフは自然に還るので、家族の負担減にもつながります。

また、同じく自然に還す方法として散骨という手段もありますが、お墓参りができないことがデメリットでした。メモリアル・リーフはGPSで場所が管理されており、ハリケーンが来ても移動しなかったことが証明されているので、お墓を見失うことがなく安心です。

遺族は、このお墓をいつでも訪れることができ、釣りをしたり、ダイビングを楽しみながらお墓参りができてしまうのです。

エターナル・リーフス社に葬儀を依頼してくる人たちは、ダイバーや漁師など海の関係者だけではありません。子どもを亡くしたりしたあらゆる年代の親たちが、生きているサンゴの一部として、第二の人生を与えてほしいと依頼するそうです。

また、リーフボールの大きさは3種類あり、金額は4,000~7,500ドル(約44万円~83万円)です。大きなリーフボールは、複数分の遺灰を含むことが可能で、家族で共に眠ることができます。「葬儀」は、リーフボールの製造、対面、設置、お別れの式、4日間にわたります。遺族や友人は、4つのイベントすべてに参加可能です。

製造時には、遺骨がメモリアルリーフボールになる様子を見ることができるほか、遺族や友人は、コンクリートが乾く前に手形やマーキング、メッセージなどを入れることもできます。それぞれのリーフボールには、死者の名を記した真鍮のメダルがとりつけられ、誰のものかわかるようになっています。

遺体を樹木の養分として土に還したり、凍らせて粉末状にするなど、さまざまな埋葬方法が提案される昨今ですが、リーフボールをはじめとした自然保護葬はこれまでの葬儀の習慣を変えるステップになるといわれています。海底で魚たちが元気に泳ぎ回るのを見守るという第二の人生の選択肢が存在しているのです。

文・J PRIME編集部

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